大阪公立大学,日本女子大学,弘前大学,東京大学は,シロイヌナズナの変異体を用いた解析から,ホスファチジルグリセロール(PG)がプロラメラボディの格子構造の形成やクロロフィル中間体の合成に必要であること,またスルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)がPGの役割を一部補うことを解明した(プレスリリース)。
光合成には葉緑体が必要であることはよく知られているが,暗所で発芽した被子植物(モヤシ)には葉緑体がない。しかし,モヤシは光を浴びる前から葉緑体を作る準備をしている。モヤシの先端には黄白色の小さな葉(子葉)があり,その子葉の細胞内にエチオプラストと呼ばれる器官,さらにその内部にはプロラメラボディと呼ばれる構造体がある。
プロラメラボディにはクロロフィルになる前の物質(クロロフィル中間体)が蓄えられており,モヤシに光が当たると,直ちにクロロフィルに変えられる。それに伴い,プロラメラボディはチラコイド膜に,エチオプラストは葉緑体になって,光合成が可能となる。
この変化や関連物質について,さまざまな研究が行なわれてきた。これまでに、プロラメラボディを作る膜脂4のうち,ガラクト脂質(MGDG,DGDG)の重要性は示されたが,残りの2つの脂質,PGとSQDGの役割は不明であった。
そこで研究グループは,プロラメラボディの足場を構成する膜脂質に着目し,これらの酸性脂質がエチオプラストの発達や機能にどのように関わるかを,PGやSQDGの合成が異常になったシロイヌナズナの変異体を用いて調べた。
その結果,プロラメラボディを構成する4種類の脂質の重要性が判明し,中でもPGがエチオプラストの発達に特別な役割を担うことが明らかになった。
研究グループは,これまでのガラクト脂質の研究と合わせ,プロラメラボディを構成する4種類の膜脂質すべての重要性を明らかにした。これは,植物がどのように効率的に葉緑体を形成し光合成を開始するかという仕組みを解明する上で極めて重要な知見となる。
特に,少量合成されるPGが局所的に特別な機能をもつ可能性が見出されたことから,今後,その機能を詳細に調べることで,膜脂質が持つ新たな役割の発見につながることが期待されるとしている。