名古屋大学と旭化成は,次世代半導体材料として期待される窒化アルミニウム(ALN)系材料において,理想的な特性を示すpn接合を作製することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
現在広く使われている半導体材料であるシリコン(Si)やガリウムヒ素(GaAs)の4~5倍の禁制帯幅(バンドギャップ)を有するウルトラワイドバンドギャップ(UWBG)半導体は,高周波デバイス,パワーデバイスの格段の性能向上を実現可能な次世代半導体材料として注目され,世界的に研究が活発化している。
しかしながら,UWBG半導体に共通する技術的課題として,電子デバイスの根幹となるpn接合の作製が困難という問題があった。
研究グループは,UWBG半導体の一つであるAIN系材料において,従来の不純物ドーピングではなく,化学組成(AINに対して数%~30%のGaNを混合する)を空間的に変化させる分布型分極ドーピング(DPD)を使用することで,特性の優れたAIN系p層,n層の実現を目指した。
理想通りのDPDを発現させるための高品質な薄膜結晶成長技術の研究開発も精力的に進めた。その結果,電流・電圧特性,電圧-容量特性,電流注入による発光特性において非常に良好な特性を示す,理想的なAIN系pn接合の実現に世界で初めて成功した。
作製したAIN系pn接合は,理想的な電流・電圧特性,電圧-容量特性,電流注入による発光特性を示した。特に電流・電圧特性において,優れた高電圧に対する耐性を示した。
高耐圧特性について,絶縁破壊電界強度を求めると7.3MV/cmとなり,これは従来半導体のSiの25倍,絶縁破壊電界強度に優れたワイドバンドギャップ(WBG)半導体であるSiCやGaNに対しても2倍の値であり,このような優れた特性を全て満たすAIN系pn接合の実現は世界初だという。
この成果は,旭化成の子会社であるクリスタル・アイエス(CIS)が開発した高品質AIN単結晶基板,名古屋大学と旭化成で共同開発したAIN系薄膜結晶成長技術(エピタキシャル成長技術),名古屋大学の次世代半導体クリーンルームを活用したデバイス形成技術により実現したものだという。
研究グループは,この成果が契機となり,AIN系材料の研究が活発化し,また,DPDを活用したさまざまなデバイスの研究開発も広がると期待している。