筑波大学の研究グループは,スパイスの抽出液に含まれるポリフェノール類やフラボノイド類の総量、抗酸化能や還元能などの特性を,光を用いて非破壊的に推定する方法を開発した(ニュースリリース)。
スパイスをはじめとする植物体から,多くの有効成分や機能性成分を抽出する際,粉砕条件や抽出条件などのわずかな違いで抽出効率が大きく変わってしまうことがある。
また,抽出液に含まれるポリフェノール量や抗酸化能を調べるためには複数の試薬を準備する必要があり,また一検体あたり数時間程度時間がかかっていた。
ポリフェノールやフラボノイド類は蛍光を発することから,抽出液の蛍光特性を測ることで,これらの成分の濃度を簡易的に調べることができる。しかし蛍光は成分の濃度が高すぎると消えてしまう特性があり,測定にあたっては試料を「適切な」濃度に希釈することが求められるが,スパイス抽出液にの成分をすべて計測できる濃度は存在しない。
そこで研究では,4段階の濃度に希釈した抽出液の蛍光をすべて測り,そのデータを合体して解析することを試みた。機械学習を用い,大量のデータからポリフェノール量やフラボノイド量,抗酸化能,還元能を推定する情報を取得した。
スパイスとしてアニスシード,ディルシード,フェンネルシードの3種を用い,それぞれについて,13の手法と条件の組み合わせで抽出液を調製した。抽出液は原液,2,5,10倍釈の 4 濃度を準備し,紫外〜可視領域の蛍光を網羅的に計測して,その特性から,各抽出液の総ポリフェノール量,総フラボノイド量,抗酸化能,および還元能を推定したところ,やはりすべての成分を精度良く計測できるような希釈濃度は存在しないことが確かめられた。
成分量と蛍光強度の間に線形性があることを想定する線形回帰分析,および線形性がない場合でも用いることができる非線形回帰分析の両方を用いて,総ポリフェノール量,総フラボノイド量,抗酸化能,および還元能を推定した。
その結果,総ポリフェノール量および抗酸化能は,比較的単純な線形回帰分析で精度よく推定できるものの,還元能や総フラボノイド量は,非線形の回帰分析でなければ高い推定精度が得られないことが分かった。また複数の回帰分析手法を組み合わせると,より高い精度が得られることが明らかになった。
この手法は,多くの食品素材,原料,溶液の計測に応用が可能。自動的に蛍光計測を行なう装置なども開発できると考えられ,研究グループは,多くの複雑な混合物の特性評価に利用できるとしている。