中部大学は,最大約10%まで伸ばしてもクラックが入らない新しい薄膜材料を開発した(ニュースリリース)。
テレビの画面,透明なガラスやプラスチックの向こうにある景色や物は,後ろから照らす太陽光や室内用照明の反射で見えにくくなる。その問題を防ぐための反射防止膜はすでに広く商品化されている。しかし膜材料の多くは数%伸ばすとクラックが入って白濁するため,曲面に利用することは難しい。
研究グループが開発したのは,金属酸化物とフッ素樹脂のポリテトラフルオロエチレン(PTFE),金属インジウム(In)からなる薄膜材料。金属酸化物は酸化セリウム(CeO2),シリカ(SiO2),酸化ニオブ(Nb3O5),アルミナ(Al2O3)の4種類で,それぞれを含んだ膜をスパッタリング技術によって基板上に積層する。
基板表面にCeO2-PTFE-In,SiO2-PTFE-In,CeO2-PTFE-In,SiO2-PTFE-Inの順に4層積層した実験では,波長約400~800nmの可視光のうち,約410~660nmの光の反射率は1%以下だった。成膜しない基板では4%以上の光を反射した。波長が約660nmを超えると反射率は十分には低下しないが,積層する膜の組み合わせと層数をコントロールすれば可視光の全波長領域で反射率を1%以下に抑えられる。
基板表面に成膜して引き伸ばす実験では,最大で約10%伸ばしてもクラックは確認できなかった。市販されている反射防止膜は2~3%の伸びでクラックが発生して白濁するという。
研究グループは,開発した反射防止膜材料は自動車のインパネや大型ディスプレーのほか,メガネレンズやカメラのレンズにも利用できるとし,企業と組んで3年以内の実用化を目指すとしている。
※当初企業との共同研究のような表記でしたが,実際には中部大学単独の研究となりますので,研究主体の表記を訂正しました。