東大ら,励起子絶縁体に擬ギャップ状態を観測

東京大学と早稲田大学は,フェムト秒赤外パルスレーザーをポンプ光,その高次高調波の極紫外パルスをプローブ光とする時間分解角度分解光電子分光を用いた詳細な測定により,Ta2NiSe5が光励起によって励起子絶縁体から半金属に遷移する途中で価電子帯と伝導帯の間に擬ギャップ(不完全なエネルギーギャップ)を持つ特異な量子状態が現れることを発見した(ニュースリリース)。

伝導帯における電子と価電子帯における正孔がクーロン引力によって束縛された状態を励起子と呼ぶ。通常,励起子は光で電子・正孔対を励起することによって生成されるが,励起子が自発的に生成されることでより大きなバンドギャップが生じて安定化することも考えられ,そのような物質を励起子絶縁体と呼ぶ。

Ta2NiSe5は励起子絶縁体の1つであり,この物質にフェムト秒レーザーを照射すると半金属になることがこの研究グループによって発見されていた。

今回,研究グループは,同物質のNiを10%Coに置換したTa2Ni0.9Co0.1Se5を作成し,フェムト秒レーザーをポンプ光として照射,半金属に転移する過程でエネルギーギャップが不完全になる特異な「擬ギャップ状態」が現れることを発見した。

光誘起相転移による物性変化,物性制御は,将来的には新しいタイプの光量子デバイスへの応用が期待されるとしている。

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