理研,極超短パルス光を光渦に変換し時空間構造制御

理化学研究所(理研)は,光電場が振動する周期よりも短い時間幅の極超短パルスレーザー光(サブサイクル光)を光渦に変換し,その時空間構造の制御に成功した(ニュースリリース)。

レーザー光のラゲール・ガウシアン(LG)モードは,ビームの進行方向に対して振動の等位相面が渦状に変化する様子から光渦と呼ばれ,特殊な形状のレーザー加工や特異な構造を持つ物質の研究などに役立つ。

しかしながらサブサイクル光渦の生成は,ガウシアンモードのサブサイクル光の発生自体が簡単ではなく,またサブサイクル光は,広帯域な周波数成分を含んでいるため,LGモードに変換する際に色ずれの影響が避けられない。さらにサブサイクル光渦の検証方法も課題だった。

研究グループは光学パラメトリック増幅(OPA)システムを開発し一つ目の問題を解決しており,このシステムから発生するサブサイクル光を光渦に変換するモード変換器を検討した。

その結果,既存の手法の中で,サニャック干渉計を用いたものが最も色ずれの影響が少なく,サブサイクル光に含まれる波長1,000~2,400nmの色全体を光渦へ変換できたため,細部を周到に設計してモード変換器を開発した。

空間的な等位相面の様子を知るために,モード変換器からの出力光をガウシアンモードのサブサイクル光と干渉させた。どの波長においても一つの渦巻き状のパターンが現れた。トポロジカルチャージ(巻数)の大きさが1の光渦が生成され,実験配置から巻く方向の符号が正だと分かった。

サブサイクル光渦は,2次元シアリング干渉(2DSI)を用いて,この光渦のパルス波形の測定を行なったところ,パルス幅は電磁場の振動周期よりも短く,この光渦がサブサイクル光だと分かった。

サブサイクル光渦では,電場の時間波形の変化が空間的な位相分布に変化をもたらすことが予想されており,電場波形がCEPの値に応じて変化することに着目し,CEPの変化を検知する手法(f-2fスペクトル干渉法)を2次元空間に拡張した2次元f-2f干渉法を新たに開発した。この方法では,空間的な位相に対するCEPの影響を評価できる。

サブサイクル光渦において,時間的な位相であるCEPの変化によって渦巻き状の空間位相が回転することは予測されていたが,今回これを実験的に初めて明らかにした。これらの実験で得られたデータを再構築してサブサイクル光渦の時空間分布の再現もできた。

研究グループは,今後は渦としての空間的な特異性と超短パルス光としての時間的な特異性を組み合わせて,渦の方向を区別するカイラル分子や結晶などの超高速ダイナミクスの研究への応用が期待されるとしている。

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