東北大学の研究グループは,レーザーを使用して,部分的に熱を加える新しい方法を考案し,髪の毛よりも細い約60μmの磁石と光の特性に優れるセリウム置換イットリウム鉄ガーネット(Ce:YIG)を作ることができたと発表した(ニュースリリース)。
現代のデジタル社会は,安定した光通信技術に支えられている。この技術の中で,光を一方向にしか通さないデバイスである磁気光学アイソレータは,通信に使われる光の状態を安定化する上で重要な役割を果たしている。しかし,磁気光学アイソレータを使用する箇所は多く,デバイスサイズが大きいため,これを小型化したいという要求が多くある。
このため磁石と光の特性に優れた磁気光学材料を,小さな光デバイスと一体化し,小型の磁気光学アイソレータを作ることは,長い間望まれている。しかし多くの技術的課題があり,まだ実用化には至っていない。
主に良質な磁気光学材料である磁性ガーネットを作るには,デバイスを約700度以上の高温にする必要があり,この高温プロセスにより,一体化された光デバイスまで熱でダメージを受け,動作しなくなるという課題がある。
この技術的な課題を解決するため,研究グループは,レーザーを使って局所的に熱を加える新しい方法を考案した。この方法では,レーザーが当たった僅かな部分だけが瞬時に高温になる特性を利用している。
研究グループはこの方法を用いて,磁気と光の特性が良いとされる透明なセリウム置換イットリウム鉄ガーネット(Ce:YIG)を作製した。このCe:YIGを作るには真空の中で材料全体に熱を加える必要があったため,難しいとされてきた。
そこで研究グループは,真空中でレーザーを用いて熱を加えられる新しい装置を開発した。この装置を使って,約60μmの小さな点のような部分だけにCe:YIGを作ることに成功した。
研究グループは,磁石で制御できるハイパワーレーザー,大画面で高精細なディスプレー,磁石のセンサーや,スピン波回路を作るのにも役立つ技術だとしている。