東大ら,初期の宇宙で酸素が増加した痕跡を発見

東京大学と国立天文台は,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の大規模観測データを用い,宇宙誕生から5億年後にあたる,133億年前の宇宙まで遡り,酸素の存在比を調べ,宇宙の最初の5〜7億年にある銀河の中で,酸素が急激に増えたことが判明したと発表した(ニュースリリース)。

星の集まりである銀河に含まれるガスを,遠くまで観測することで,過去の宇宙における酸素の存在比を測ることができる。これまでの観測から,ビッグバンから約20億年後(120億年前)の宇宙においては,銀河の中に既に豊富な酸素が存在することが判明していた。

しかし,それより過去の宇宙にある銀河からの光は,宇宙膨張の影響を強く受けて,近赤外線になるため,ほとんど観測することができなかった。

研究グループは,2022年に科学運用を始めたばかりのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器NIRSpecで得られた1-5μmの観測データを使って,これまで酸素の存在比を調べることがほぼ不可能だった120億年以前の遠い銀河を138個見つけ,それらの酸素の存在比を測定することに成功した。

この研究の開始時には,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データの解析手法は世界的にもまだ確立されていなかった。しかし,様々な試験を重ね,優れた解析手法を開発し,さらにはこの解析手法を従来の研究よりも数倍から10倍以上の大きなデータに適用した。

その結果,現在から131億年前までの銀河では,銀河の質量などに応じた量の酸素が存在していることが明らかになった。その一方で,131〜133億年前で見つかった7個の銀河中7個全てが酸素の存在比が半分程度と少なくなっており,このうち6個については95%以上の確率で酸素の存在比が少なかった。

研究グループは,これによって,宇宙の誕生から最初の5〜7億年において,銀河における酸素の存在比が急激に増えたことが分かったとしている。

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