名大ら,ゴムと金属の接着老化に関わる反応を可視化

名古屋大学,横浜ゴム,高輝度光科学研究センター,北陸先端科学技術大学院大学は,大型放射光施設SPring-8において,X線吸収微細構造−コンピューター断層撮影(XAFS-CT)法を用いて,ゴムと真ちゅう(銅と亜鉛合金)材料の接着モデルに対し,ゴム中の銅の分布と化学種の状態を三次元的に可視化した(ニュースリリース)。

自動車用タイヤには,真ちゅうがめっきされたスチールコード(ベルト)が埋め込まれており,ゴムに添加された硫黄と真ちゅうの銅が反応することで硫化銅層を形成し,両者が強固に接着されている。

しかし,湿度や熱の負荷がかかる環境下(湿熱老化反応がおこる条件下)では,接着に関わる化合物の種類や分布が変化し,接着力の低下が起きることが問題になっている。

研究グループは,XAFS-CT法を用いて,ゴムと真ちゅうの接着モデル試料に対し,材料中の銅の分布と場所ごとの化合物の種類の違いを三次元的に可視化する方法を開発した。XAFS-CTで計測した画像データを解析することで,真ちゅうにもともと存在する合金の銅に加えて,ゴム中の硫黄と結合した1価および2価の硫化銅の計3種類の化学種の分布と量を三次元的にイメージングした。

解析の結果,湿熱老化の初期(3日目)には,真ちゅう粒子の周辺に薄く1価の硫化銅が分布し,ゴムとの接着層の形成を示唆する構造が多く観察された。湿熱老化の反応時間を延ばしていくと(14日以降),真ちゅうの反応が進み,2価の硫化銅が生成し始め,湿熱老化処理の時間に応じて,銅の溶出,硫化,拡散が進む様子が初めて可視化された。

湿熱老化時間を長くすると,3種類の銅成分では,矢印の大きさと向きが異なり,湿熱老化時間に応じてその挙動が劇的に変化することがわかった。そこで,機械学習を用いて,矢印の傾向を分類したところ,5種類のパターンに分類できることがわかった。

このパターンは,湿熱老化における銅の反応の仕方の違いに相当しており,湿熱老化時間に沿って反応のパターンが変わっていく様子が見られた。

湿熱老化時間が短いと,1価の硫化銅が増える反応が主に起こるのに対し,湿熱老化時間が3日を過ぎると,接着老化につながると考えられている2価の硫化銅が生成する反応が主に起こることを突き止めることに成功した。

研究グループは,これまでわからなかったゴム材料内部の接着老化メカニズムの可視化,寿命予測につながり,今後,長寿命・再資源化のための研究開発に貢献できるとしている。

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