国立情報学研究所(NII),日本電信電話(NTT),東日本電信電話(NTT東日本),富士通は,光1波長あたり1.2Tb/sでの伝送では世界最長となる伝送環境を構築し,フルスループット(伝送環境で送受信可能な最大データ量)での伝送と,1組の汎用1ソケットサーバを用いた世界最大速度の1Tb/s超データ転送に成功した(ニュースリリース)。
現在,5Gサービス,ビッグデータ,AI,クラウドコンピューティング等の発展に伴い通信トラヒックが急増する中,通信ネットワークの更なる高速化および大容量化が求められている。
この実験では,各組織での技術開発成果を集結させ,光1波長あたり1.2Tb/sでの世界最長伝送とこの回線を用いたデータ転送を実証した。
東京都千代田区を起点として神奈川県横浜市で光ファイバを折り返すネットワークを構成し,光1波長あたり1.2Tb/sの伝送が可能であることを確認した。1.2Tbps信号のフルスループットは実験用テスターで確認した。
光1波長あたり1.2Tb/sの光信号を,敷設済みの商用光ファイバを用いて336km伝送できたことは,世界初となる。この実験にあたってNTTは,世界最先端のデジタル信号処理技術,ならびに最大400GbE(ギガビットイーサ)を3本多重可能なOTUCn技術を実装したチップ,および世界最大級の光-電気応答帯域を持つ光デバイスを開発した。
富士通は,NTTがリードし富士通などとともに開発したチップを活用し,150Gbaudで光1波長あたり1.2Tb/sの伝送レートを実現可能なトランスポンダを開発した。NTT東日本は,敷設済みの商用光ファイバを用いた実験用の光ネットワークを構築した。
1.2Tb/s伝送環境下にて,1組の汎用1ソケットサーバを用いNIIが開発したMMCFTPによるデータ転送を行なった。実験の結果,1034Gb/sのデータ転送速度で約47TBの大容量データを転送完了させることに成功した。
1034Gb/sのデータ転送速度では一般的な25GBのブルーレイディスク1枚を約0.2秒で転送できる。47TBの大容量データはブルーレイディスク1,880枚分に相当し,約376秒で転送することができる。
この成果は学術通信ネットワークをはじめとする様々な高速大容量通信サービスの実現を可能とし,低コスト化や低消費電力化にも寄与するもので,今後各組織はこの成果を活用した学術通信ネットワークの更なる高度化やIOWN構想の実現に向けた研究開発を推進するとしている。