信州大学と理化学研究所は,無機ナノシートが水中で周期的に配列した機能性液体に対して,磁場中で温度グラジエントを与えることでナノシートの配列を制御でき,色が重ね合わさった複雑な構造色を実現可能であることを見出した(ニュースリリース)。
構造色は微細構造が特定の波長の光を選択的に反射することで生じるため,その色調を自在に設計・制御することは難しい。
今回,研究グループは,酸化チタンナノシートが水中で周期的に配列した動的フォトニック結晶に磁場中で温度グラジエントを与えたところ,元々は1つだった構造色の反射ピークが短波長側と長波長側の2つのピークに分裂し,2つの色が重ね合わさった複雑な構造色に変化することを見出した。
酸化チタンナノシートの水分散液(0.5wt%)を厚さが1mmの石英容器に入れて,強磁場中で容器上部と下部がそれぞれ55°Cと75°Cになるような温度グラジエントを30分間与え,室温まで冷却して磁場から取り出した。
その結果,約1057nmに存在していた幅広い単一の反射ピークが1000nmと1164nmの2つの反射ピークに分裂することを見出した。
次に,共焦点レーザー顕微鏡と走査型電子顕微鏡によってナノシートの配列構造の解析を行なった。温度グラジエントで処理したナノシートの配列構造に対して,ナノシート間隔に対応する2つの波長のレーザーを利用した共焦点レーザー顕微鏡の反射モード測定を行なったところ,異なるナノシート間隔を有する2つの領域を三次元的に可視化することに成功した。
一方,均一温度で処理したナノシートの配列構造に対して同様の測定を行なったところ,領域全体に渡って2つの波長のレーザーが均一に反射されることが分かり,単一のナノシート間隔を有することが示唆された。
さらに,電子顕微鏡観察を行なったところ,温度グラジエントで処理したナノシートの配列構造において,高温領域のナノシート間隔は低温領域のナノシート間隔より小さいことも確認した。
最後に,酸化チタンナノシートの濃度を変化させて温度グラジエントで処理したところ,どの場合においても反射ピークの分裂を引き起こし,2つの色が重ね合わさった複雑な構造色を実現することに成功した。また,温度グラジエントおよび均一温度で繰り返し処理することによって,構造色を可逆的に変化させることにも成功した。
研究グループは,この戦略が構造色を自在にデザインするための新たな指針となり,次世代色材の創成に繋がることが期待されるとしている。