東北大学の研究グループは,nmサイズの周期構造で構成されるアルミ製遮熱メタマテリアルを開発し,熱となる近赤外波長は反射するが5G/6G通信帯の電波(可視波長)は透過する,透明な遮熱窓の基材を作製することに成功した(ニュースリリース)。
カーボンニュートラルを目指し,日本や欧州を含む先進国では環境規制が強化され,さらなる省エネルギー対策が求められている。一方,地球温暖化による気温上昇が世界各地でみられ,特に夏季には室内空調のためますます電力が多く消費される傾向にある。
解決策の一つとして,建物や車等の窓に遮熱機能をもたせることが考えられるが,一般的に普及している遮熱ガラスは5G/6G通信帯の電波を遮断するため無線でのスマホやパソコンの利用に影響が出るという課題がある。
研究グループが作製した遮熱メタマテリアルの顕微鏡には,石英ガラス基板上にアルミからなる十字パターンのメタマテリアル単位構造が,周期460nmで二次元周期状に形成されている。3.3cm×4.0cmの領域内に,均一にメタマテリアル構造が形成されている。
遮熱メタマテリアルの可視波長~近赤外波長領域における反射率特性と6G通信帯における透過率特性は,近赤外波長(約1.1μm,周波数約273THz)において,反射率80%超が得られ,ある領域では最大反射率86.1%が得られた。
また,テラヘルツ時間領域分光法により測定した結果,6G通信での利用が期待されている0.2~0.3THz付近の周波数において,80%程度の高い透過率が得られ,有限要素法に基づく電磁界の数値計算結果ともよく一致した。
さらに,5G通信に割り当てられている28GHz帯の周波数において,80%程度の高い透過率が得られることを計測により確認した。このことから,5G/6G通信帯において実用レベルの高い透過率特性が得られることを実証した。以上のことから,大気の温度を高める近赤外の周波数(約273THz)は反射して通さず,5G通信帯/6G通信帯の電波は通す特性が得られた。
作製した遮熱メタマテリアルは,可視波長範囲で最大77.2%の高い透過率を有し,60°の傾斜角度をつけても約50%以上の透過率が得られた。また,遮熱メタマテリアルの背後に映る風景を,広い傾斜角度範囲において明瞭に撮影することができ,作製した遮熱メタマテリアルは,透明遮熱窓としての使用に好適であることが実証された。
研究グループは,この技術は,ナノインプリント等で大面積化が実現できると考えられることから,建材・自動車用遮熱窓への応用が期待できるとしている。