矢野経済研究所は,国内の製造業向けプラントO&Mサービス市場を調査し,市場動向や主要プレイヤーの動向,将来展望について明らかにした(ニュースリリース)。
それによると,2022年度の製造業向けプラントO&M(Operation&Maintenance)サービスの国内市場規模(事業者売上高ベース)を,前年度比101.2%の1兆312億円と推計した。
2022年度は,定期修理工事や日常保全,ユーティリティ設備の修繕などの案件が前年度から増加し,またコロナ禍で延期されていた工事も回復傾向にあり,市場規模が拡大した。
2023年度は日常保全などのメンテナンスニーズに加えて,コロナ禍で投資が保留となっていたメンテナンス案件が発生する見通しで,製造業向けプラントO&Mサービス市場は前年度比100.1%の1兆323億円の見込みであるという。
今回の調査で注目した遠隔監視技術は,センサーやカメラなどでプラント用設備・機器を遠隔で監視することにより,リアルタイムでの稼働状況の確認や不具合の早期発見などに寄与する技術である。これまで人が巡回監視して行なってきた監視業務を自動化できるため,人手不足対策にもなり得る。
人手不足対策や遠隔監視用デバイス(センサー,カメラ等)の進化による監視機能の拡充などを背景に,遠隔監視技術をプラント内の設備・機器に適用する先が拡大しており,電気設備・機器をはじめ,熱源設備・機器、熱処理設備・機器などに適用されている。
電機メーカー系のフィールドエンジニアリング会社など大手のO&Mサービス事業者では,遠隔監視機能を組み込んだメンテナンスメニューを拡充する動きがあり,プラントO&Mサービスにおいて遠隔監視技術の活用は今後更に進んでいく見通しだとする。
製造業向けプラントO&Mサービス市場規模は,2024年度が1兆405億円,2025年度が1兆454億円になると予測する。今後,プラントオーナーサイドにおいて,プラントの高経年化(長期間使用により,機器や構造物に起きる劣化)による点検・修繕業務の必要性の増加や技術者不足などを理由に,点検・メンテナンスなどの保全業務を専門事業者に委託する動きが徐々に増えていくと予測した。
鉄鋼や石油・石炭などプラントの合理化が進む分野では,生産設備の統廃合によりメンテナンス対象となる設備の母数は減る可能性があるものの,製品の供給責任やレジリエンスの観点から,生産を継続する設備についてプラントオーナーは安定稼働に必要な投資を継続的に行なうものと考えられるという。