SCREENホールディングス,国立天文台,情報通信研究機構は,総務省が公募した「情報通信技術の研究開発に係る提案の公募(ICT重点技術の研究開発プロジェクト)」の応募テーマ「衛星光通信用次世代補償光学デバイスの研究開発」に採択されたと発表した(ニュースリリース)。
衛星-地上間の光通信では,大気ゆらぎによるレーザー光の歪みが,通信品質に多大な影響を与える。この大気ゆらぎを解決する有効な手段として補償光学技術があり,各国で研究開発が進められている。
現在は,可変形鏡を用いて幾何学的に歪みの補正を行なう方法が一般的だが,この方法では,制御速度が数kHzであることから大気ゆらぎが10kHz程度の複雑な場合や変動が激しい場合には追従できないという課題がある。
Tb/sクラスの光通信の実現には,可変形鏡を100kHz程度の速度で制御可能であることが必要。また,一般に大気ゆらぎ補正では,大気ゆらぎのスケールに応じてレーザー波面を分割して補正するため,光アンテナが大口径になる場合は分割数を増やす必要があるが,多数の可変形鏡分割点を同時に制御することが困難である点や,駆動部分を含めた可変形鏡のサイズを小さくできないという課題がある。
さらに,レーザーの高出力化による熱で可変形鏡が損傷する問題もあり,今回のテーマは,従来の幾何学的な波面制御では困難な高速位相制御を実現するため,100kHzレベルの制御が可能で,高出力レーザーに対する耐性を有し,大口径アンテナに対応する高分割化が可能な補償光学デバイスを開発し,革新的な次世代補償光学技術を確立するというもの。
これにより,Tb/sクラスの光通信の実現を図り,国際競争力の強化に資する衛星光通信技術を実現する。なお,このテーマにおける令和5年度実施予定額の上限額は,税込3.0億円となっている。