神奈川工科大学の研究グループは,クロスカップリング反応を利用し,ピリジン化合物との置換反応を試みた結果,新しいアズレン化合物「アズレニルピリジン」の合成に成功した(ニュースリリース)。
科学や医学の発展に伴い新たな問題・課題が発生し,その問題・課題を解決するために新しい技術の開発が求められている。求められる新しい技術を生み出すためには,新しい機能を有する化合物の創製が欠かせない。
カモミールなどのハーブから蒸留によって採れる精油は,しばしば鮮やかな青色となることが昔から知られていた。有機化学者は青色の成分を分離し,構造を突き止め,アズレン(Azulene)と名付けた。
その後,アズレンを基本骨格とするアズレン誘導体は「消炎効果」を示すことから,「うがい薬」や「胃潰瘍の薬」として用いられるようになった。
また,ある種のアズレン誘導体は,半導体に似た性質を示すことから電子工学材料として,新しいアズレン誘導体の合成を試みている。
さらに,アズレンは電子が動きやすい構造,つまり電気が流れやすい構造をしている。この構造から有機半導体の材料としての利用が検討されており,実際にアズレンを基盤とする有機半導体の創出事例も報告されている。
研究グループは,異なる有機化合物の炭素と炭素を,触媒を用いて結合させるクロスカップリング反応を利用し,ピリジン化合物との置換反応を試みた結果,新しいアズレン化合物「アズレニルピリジン」の合成に成功した。新化合物の一つの特徴として,中性溶液と酸性溶液では色が異なるなど新しい発見があった。
アズレンは炭素原子が7つの環と5つの環が縮環でつながった構造をしている。このつながりを7-5-7-5…と真っすぐにつなげることは難しく,現時点では7-5-7までしか達成されていないが,研究グループは4つめの環を構築中だという。
研究グループは今後,この新化合物の電子工学材料としての可能性を探索していくとしている。