東北大,放射光で蓄電池劣化過程を非破壊追跡

東北大学の研究グループは,コンピュータ断層撮影―X線吸収微細構造法を用いて,充放電サイクル中の蓄電池電極内の容量劣化の3次元的な空間分布およびその時間進展を非破壊かつ定量的に追跡できる手法を開発した(ニュースリリース)。

蓄電池の電極は,イオンを貯蔵・排出する活物質,イオンを輸送する電解質,電子を輸送する導電助剤などの複数の構成材料の粒子が入り乱れた極めて複雑な微細構造を有している。そのため電極中で生じる劣化も空間的・時間的に不均一になってしまい,その挙動を正確に計測することは極めて難しい。

現状では電気化学インピーダンス法などの電気化学測定手法によって電極内で不均一に生じる劣化を平均化した情報として抽出するか,あるいは電極を破壊して一部を取り出し,電子顕微鏡などを用いて,そのごく限られた領域の劣化を分析することしかできなかった。

研究グループは,大型放射光施設SPring-8のBL37XUで得られる高輝度なX線を活用し,最先端の化学イメージング技術であるCT-XAFS法を駆使することで,充放電サイクル時に,蓄電池電極内の数百µm3~数mm3ほどの同一観察領域における活物質の充電状態の3次元的な空間分布およびその時間進展を,数µm,数十分の空間・時間分解能で非破壊かつ定量的に追跡できる手法を開発した。

これにより,蓄電池の劣化に関する5次元的な情報を非破壊で取得することが初めて可能となった。この手法により得た一連のデータに対して差分画像解析を行なうことで,各充放電過程において,どこでどの程度劣化が生じたかを3次元的に可視化できる。

さらに,例えば,充放電サイクル初期にどのような反応履歴を辿った箇所が,後のサイクルでより劣化しやすいか,といった電極劣化と過去の反応履歴との関係も調べることができる。

それに加えこの手法では,電極の微細構造の情報も同時に取得できるため,電極のどこでどのような劣化が起こりやすいかといった,劣化と電極の微細構造との関係も分析できるという。

研究グループは,今回開発した手法で蓄電池の劣化要因を特定することにより,従来のトライ&エラーに頼ってきた蓄電池開発から脱却し,迅速かつ効率的に蓄電池の蓄電容量の向上および長寿命化が可能になること,また,高い拡張性・汎用性を有しており,蓄電池のみならず燃料電池や触媒など,様々なデバイス・材料の長寿命化への貢献も期待できるとしている。

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