大阪大学,神経細胞の自己認識を蛍光で可視化

大阪大学は,神経細胞の自己認識・非自己識別に関わる細胞接着タンパク質であるクラスター型プロトカドヘリン(Pcdh)の相互作用をイメージングするための蛍光センサー「IPAD」を開発した(ニュースリリース)。

細胞接着タンパク質であるクラスター型プロトカドヘリン(Pcdh)には50種類以上のアイソフォームが存在し,1つ1つの神経細胞は,数種類から十数種類を異なる組み合わせで発現している。細胞接着タンパク質としてのPcdhは,同じ組み合わせのPcdhアイソフォームを発現する細胞間でのみ接着活性を示す。

1つ1つの神経細胞は異なる組み合わせでPcdhアイソフォームを発現していることから,Pcdhは異なる神経細胞間では相互作用せず,同一神経細胞から伸びた突起間では相互作用する自己認識機構が想定されている。

これまでPcdhの相互作用は,Pcdhを内在性の細胞接着タンパク質が発現していない血球細胞に発現させ,細胞同士が凝集するかどうかを観察することで解析されてきたが,実際に同一神経細胞から伸びた突起間でPcdhが相互作用するのかどうかの直接的な証拠なかった。

そこで研究グループは,二量体形成によって蛍光を生じる特殊な蛍光タンパク質であるddGFPをPcdhのアイソフォームの1つPcdhα4の細胞外領域に挿入することにより,Pcdhα4相互作用によって緑色蛍光を生じる蛍光センサー「IPAD」を開発した。

これまで,細胞間相互作用や細胞間における細胞接着タンパク質を可視化するための蛍光センサーには,split-GFPという技術が使用されてきた。しかし,この技術を使用した蛍光センサーは,細胞が接触してから光り出すまでに時間を要するのに加え,反応が不可逆であるため,ダイナミックに変化する細胞間相互作用を捉えることが出来なかった。

そこでIPADでは,可逆的なddGFPを使用することで,同一神経細胞から伸びる突起間におけるPcdhα4相互作用の形成と解離をリアルタイムで捉えることに成功した。

この研究において,同一神経細胞から伸びた突起間におけるPcdhの相互作用が初めて可視化された。これまで,想定されてきた神経細胞の自己認識・非自己識別におけるPcdh相互作用の重要性を直接検討するための大きな一歩。研究グループは,今後,IPADを使用して,その意義が明らかになると期待している。

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