三菱,宇宙通信用レーザー光源モジュールの性能実証

三菱電機は,大容量宇宙光通信のキーパーツとして開発した光源モジュールを超小型人工衛星に搭載し,2023年1月に宇宙空間での性能実証に成功した(ニュースリリース)。

近年,災害現場の状況把握や森林資源の保護など,さまざまな用途で人工衛星による撮影画像の活用が進んでいる。用途によっては,より早く高精度に地上の状況を把握する必要があるが,従来の電波を利用した衛星通信では通信容量や通信時間,通信距離などの制約があった。

このような課題を解決するため,大容量かつ高速な宇宙光通信が求められている。開発した宇宙光通信用光源モジュールから放射されるレーザー光は,電波に比べて波長が短く,地上の受信アンテナを小型化できることから設置も容易になり,さまざまな状況での利用拡大が期待できる。

同社は,電波による通信に比べて10倍以上の大容量化や高速化,長距離通信が可能な宇宙光通信の実現に向けた技術開発を推進している。今回,この大容量宇宙光通信に適用可能な波長1.5μm帯レーザー光源モジュールを,産学連携プロジェクトで開発した超小型人工衛星「OPTIMAL-1」に搭載し,宇宙光通信で重要なレーザー光周波数制御の宇宙空間での性能実証に成功した。

人工衛星間でレーザー光線を用いた通信を行なうには,人工衛星がそれぞれの速度で動くために生じるドップラー効果(レーザー光周波数の変化)を人工衛星の相対速度に応じて補正することが必要となる。今回開発した光源モジュールで,世界で初めてこのドップラー補正に十分なレーザー光周波数変化量60GHzを宇宙空間にて実証した。

また,産学連携プロジェクトで開発した超小型人工衛星を活用し,宇宙空間での性能実証試験実施したことで,大規模な宇宙開発プロジェクトへの参画と比べ,短期間で低コストの実証が可能になった。具体的には,従来の大型人工衛星への搭載による実証に比べ,約3分の1の期間と約100分の1の開発費用で実現に成功した。

同社は,今回の実証で活用した技術を,大規模な宇宙開発プロジェクトへも提案していく。また,超小型人工衛星を宇宙空間での重要な実証プラットフォームと位置付け,引き続き産学連携の枠組みを活用した研究開発を推進していくとしている。

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