北大,室温で強く緑色発光するレアアース分子を開発

北海道大学の研究グループは,紫外線励起により高色純度で高輝度な緑色発光を示す新型レアアース分子の開発に成功した(ニュースリリース)。

色純度の高い発光を示す蛍光体は,ディスプレーや照明など現代社会において必要不可欠な材料となっている。蛍光色素や無機蛍光体など様々な発光体が開発される中,研究グループは「レアアース分子」と呼ばれる化合物群の研究を行なっている。

レアアース分子とはユーロピウムやテルビウム等のレアアースと有機分子から構成される無機・有機ハイブリッド材料であり,“色純度の高い発光色”を示すという特長がある。また,毒性も低い。

レアアース分子を強く光らせるためには,アンテナ分子の吸収した光エネルギーを効率良くレアアースに渡すことが重要。そのためにはレアアースの発光準位より有機分子のエネルギードナー準位が十分高いことが必要とされており,レアアースに取り付ける有機分子の構造に一定の制約があった。また,周囲環境の温度が上がることにより,そのエネルギーを受け渡す効率が下がり,発光輝度が下がるという問題があった。

研究では,レアアース分子に紫外線を効率良く吸収する芳香族アンテナを導入した。芳香族アンテナを導入したレアアース分子は,X線構造解析によって剛直な構造を有していることが分かった。

新型レアアース分子はレアアースの発光準位より有機分子のエネルギードナー準位が低いにも関わらず強い緑色発光を示した。これは,剛直な芳香族アンテナの特筆した長い光励起寿命に由来しているという。

このエネルギードナー準位が低い有機分子を導入した新型レアアース分子の発光輝度は,研究グループがこれまで開発した高発光効率を示すレアアース分子と比べて,室温で200倍以上高い値を示した(365nm,紫外線照射条件)。

緑色発光の強いレアアース分子を設計することは困難だったが,今回のブレークスルーによって大幅に改善された。また,レアアース分子は高温条件下で発光輝度が下がることが知られているが,新型は室温から温度を上げると発光輝度が向上するということが分かった。

この特異な現象は熱アシストにより光増感発光が促進された結果であり,芳香族アンテナの長い光励起寿命に由来している。研究グループは,開発した新型レアアース分子は,ディスプレーや高感度酸素センサー用の分子性発光素子として応用展開が期待されるとしている。

その他関連ニュース

  • 東大,カリウムイオンが赤く光る蛍光センサーを開発 2024年12月02日
  • SP,蛍光フィルターセットを発表 2024年11月22日
  • 理研ら,蛍光寿命バイオセンサー生成基盤を開発 2024年11月20日
  • ニコン,LED光源に対応の実体顕微鏡用蛍光照明装置 2024年10月30日
  • 公大,手術中の末梢神経の血流状態を可視化 2024年10月02日
  • 東大ら,世界最高速の蛍光寿命顕微鏡を開発 2024年09月05日
  • 阪大ら,生体分子を光で不活性化できる技術を開発 2024年08月07日
  • 秋田大,Gタンパク質の活性化を蛍光で可視化 2024年08月07日