京産大,超低熱膨張セラミック製反射光学系を実証

京都産業大学の研究グループは,反射光学系のすべてのコンポーネント(鏡,保持具,定盤)を超低熱膨張セラミックのコージライトで製作し,機械的に組み上げるのみで高精度なアライメントを完了するアイディアを考案した(ニュースリリース)。

反射光学系は,透過光学系にない利点を多数持ち,理想的な光学設計の実現に適している。しかし,同じ波面精度を得る場合,反射光学系では,透過光学系に比べて4倍高い形状精度(面精度)とアライメント精度が求められ(レンズ材の屈折率:1.5)ると共に,軸外し系が基本である反射光学系のアライメントは多大な労力を要する。

そこで,反射光学系のすべてのコンポーネントを,超高精密多軸加工機などを用いて同一の材料で製作し,機械的に組み上げるのみで,高いアライメント精度の達成と,温度変化によるアライメントの変化や破損への対策も格段に低減されるアイデアがあるが,鏡材と構造材の両方に使用できて加工性もよい材料が見つかっていなかった。

そこで研究グループは,超低熱膨張セラミック材のコージライトに着目。セラミック材は多孔質である(研磨面にボイドが生じる)ことが実用の妨げとなっていたが,近年,ボイドレスの製品が開発されるようになった,

コージライトは保持具や定盤として利用できる機械特性を持つほか,焼結前の柔らかい状態で完成品に近い状態に成型加工できるため,ブロックから削りだす金属やガラスよりも複雑な形状を実現しやすく,通常の金属機械加工と同等の高寸法精度の部品を製作することもできる。

研究グループは,3枚の球面からなるコージライト製試験光学系を製作した。この試験光学系では機械的なアライメントのみで組上げを完了しているが,光学面が想定通りにアライメントされていることを確認した。

波面誤差を,レーザー干渉計を用いて常温及び低温において測定したところ,いずれの温度においても,回折限界の光学性能を達成しており,しかも常温から低温への冷却過程で波面マップのパターンはほとんど変化せず,期待通り「機械的な組上げのみで高精度アライメント」と「高い温度安定性」を実証した。

コージライト製反射光学系を用いることで,高波面精度,広視野,高感度を兼ね備えた観測装置を,より容易に実現できるようになる。研究グループは,コージライト製反射光学系を用いた近赤外線高分散分光器Vの開発を進めており,同等の観測波長帯・波長分解能をもつ装置の中で世界最高の感度達成を目指すとている。

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