阪大,ナノ粒子のより安全な設計手法をAIで確立

大阪大学の研究グループは,ナノ粒子の一種であるナノシリカをより安全に設計するための人工知能を用いた新しい手法を確立した(ニュースリリース)。

ナノ粒子は人工的に作られた直径100nm以下の粒子で,化粧品,塗料,繊維,電子機器などの民生品に幅広く利用されている。これまで,ナノ粒子が人の健康に影響を及ぼすとした報告はないが,従来の材料とは異なる独特の形状や性質ゆえに安全性を懸念する指摘もある。

そのため,人体に直接接する化粧品に対しては欧州委員会(EC)の消費者安全科学委員会(SCCS)やアメリカ食品医薬品局(FDA)ではガイドラインを制定し,その安全性を評価している。しかし,生物学的に,ナノ粒子が細胞等に与える潜在的な影響を予測することが難しいのが現状だった。

研究グループは,ナノ粒子の一種であるナノシリカをより安全に設計するための人工知能を用いた新しい手法を確立した。具体的には,100以上の科学論文から情報を収集し,人工知能アルゴリズム(CatBoost)を活用することで,文献データマイニングと機械学習を組み合わせて,ナノシリカの安全性を評価するための汎用的なインシリコ予測モデルを確立した。

研究により,濃度,血清の有無,大きさ,暴露時間,表面特性,など,ナノシリカの安全性に影響を与えるいくつかの重要な要因が明らかになった。その結果,ナノシリカの表面を加工し,低濃度で使用することで,安全性が大幅に向上することがわかった。

今回,ナノシリカの安全性を評価する際に,ナノシリカ-コロナ複合体が果たす役割を明らかにした。ナノシリカは,血液中などでタンパク質と接触すると,その表面にコロナと呼ばれるタンパク質の層を形成する。今回の研究でナノシリカ-コロナ複合体の挙動を理解することは,ナノシリカの安全性の正確な予測に不可欠であることが初めて明らかになった。

また,安全性予測モデル構築における外部検証の重要性も示された。研究で一般的に行なわれている内部検証では,必ずしも信頼性の高い予測値が得られるとは限らないが,外部検証では,独立したデータセットを使って予測結果を検証する。この厳格なアプローチにより,モデルの正確性と汎用性が保証され,研究結果がより確実なものとなっているという。

研究グループは,今回実施した文献データマイニングと機械学習の組み合わせによる安全性予測を,医薬品に利用されるリポソーム等の他のナノ粒子にも応用し,適切な属性(設計条件)を抽出することで,より安全なナノ粒子材料の開発が可能となるとしている。

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