情報通信研究機構(NICT)を中心とした国際共同研究グループは,15モード光ファイバで初の増幅中継による,273.6Tb/s,1,000km超の伝送実験に成功した(ニュースリリース)。
増大し続ける通信量に対し,より区間の長い光ファイバ伝送には増幅中継が必要となる。現状,モード数の多い多重信号は,多重状態のまま増幅して中継することはできず,まず,モードごとの信号の分離と従来型の光増幅器による並列増幅を行なった後に,再度,モード多重をして中継するシステムが必要。
加えて,大容量伝送のためには,広い波長帯域の利用と,波長チャネルごとの信号強度調整も必要となる。さらに,マルチモード光ファイバは,モードごとの光信号の伝搬時間が異なり,距離やモード数に応じてその差が蓄積するため,長距離の伝送は困難だった。
結果として,これまでに報告されたモード多重増幅中継伝送のモード数は,10モード(伝送距離1,300km)が最大で,周波数帯域は約0.14THzまでであり,伝送容量は4.13TB/sだった。
NICTは,15モード増幅中継伝送システムと送受信システムを構築し,国際共同研究グループの製作した15モード光ファイバとモード合波器/分波器を利用して,合計273.6Tb/s光信号の1,001km伝送に成功した。
15モード増幅中継伝送システムは,モード合波器/分波器と,従来型の光増幅器,波長チャネル制御装置,周回制御スイッチを用いた15個の周回伝送系から成る。
伝送ファイバで生じるモードごとの伝搬時間差の蓄積を抑制するため,遅延の少ないモードを経由してきた信号と多いモードを経由してきた信号を中継点で載せ替え,受信端に到達したときのタイミングのずれを抑えた。
今回の実験ではC波長帯における184波長の偏波多重16QAM信号を15モード多重し,1区間当たり58.9kmの15モード光ファイバを17回周回させた後に,高速な並列信号受信によって全モードの信号を一括で受信し,MIMOデジタル信号処理によってモード間の信号干渉除去に成功した。
総伝送距離は過去の15モード多重伝送と比較して20倍以上,伝送容量・距離積は10倍以上となった。この増幅中継伝送システムは,より長距離に適した結合型マルチコア光ファイバでも利用でき,コア数やモード数を拡大することや波長帯域を拡張することで,一層の大容量化が期待できるという。
研究グループは,増幅中継システムの並列数をより増やし,コア数の大きい結合型マルチコア光ファイバやモード数の大きいマルチモード光ファイバでの中継伝送を可能にするとしている。