千葉大ら,新型ニュートリノ光検出器を開発

千葉大学の研究グループは,南極点で宇宙から飛来する高エネルギーニュートリノを観測する国際共同研究プロジェクト「IceCube(アイスキューブ)」のために開発した新光検出器モジュール「D-Egg」(ディーエッグ)320台を製造し,その性能検証結果を発表した(ニュースリリース)。

南極点で稼働中の世界最大の宇宙ニュートリノ観測実験IceCubeは,宇宙から地球に届いたニュートリノが南極点の氷中の原子核や電子と衝突した際に放射されるチェレンコフ光を検出することでニュートリノを捉える。

IceCubeはこれまで,可視光に比べ1000兆倍も高いエネルギーをもつニュートリノ放射の発見やその放射天体を同定するなどしてきた。この観測をさらに高感度化,大規模化するために,氷河深くに埋め込めることのできる耐圧性能を持ちながらより小型で,より微弱な紫外光を検出する新しい光センサーモジュールが求められてきた。

研究グループは今回,過去にニュートリノ検出に使われたセンサーの製作で実績のある企業はもとより,部品の提供が全く初めての企業からの部品も多く取り入れ,「D-Egg」を完成させた。

光検出器の要となる光センサー部分を担う光電子増倍管(PMT)は浜松ホトニクス製を採用。現行の光検出器では1つだった光電子増倍管を,D-Eggは2つ設置した。これにより,チェレンコフ光の検出効率を上げるとともに,光子の飛来方向の測定誤差を低減させることが可能になった。

光電子増倍管を格納する耐圧硝子容器は岡本硝子製。埋設される際,光検出器には深海7000m水圧相当の圧力がかかる。この高圧に耐えうる深海実験向けに開発された耐圧ガラスを基に,紫外線領域の透過度を改善し,放射線雑音の元となる不純物の少ない新型の容器を開発した。

光電子増倍管を耐圧硝子球に接着し,ニュートリノからの紫外光をもれなくセンサー感度面に送り届けるシリコンは,信越シリコーンが開発。モジュール設計は,深海設置の地震計製作などに実績がある日本海洋事業の協力で施され,製造作業も同社の整備場にて行なった。

千葉大学の大型フリーザーを用い,D-Egg検出器モジュールの検証測定をした結果,現行のIceCube実験用検出器モジュールに比べ,20%小型でありながら2.8倍の検出効率を持つことが実証されたという。

IceCube-Gen2では,現在のIceCubeの約8倍の体積の氷河の中に約1万台の光検出器を埋設し,宇宙ニュートリノ点源検出感度を5倍以上に向上するとしている。

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