千葉大ら,60年前の素粒子の標準理論を初検出

千葉大学らの研究グループは,IceCube(アイスキューブ)実験における高エネルギーニュートリノの観測から,Glashow共鳴という現象を初めて検出した(ニュースリリース)。

IceCubeとは,南極点直下の氷中1500m~2500mの深さに,直径約33cmの耐圧ガラス球内に光検出器を格納したモジュールを5,160個埋め込んで宇宙から飛来する高エネルギーニュートリノを観測する国際共同プロジェクト。

1979年のノーベル物理学賞受賞者であるSheldon Glashow氏は,もし反電子ニュートリノ(ニュートリノの反粒子)がちょうどよいエネルギーを持って電子と衝突したら,当時まだ発見されていなかった粒子(Wボソン)を生成すると予測し,この現象は「Glashow共鳴」と名づけられた。

その後Wボソンが発見されたが,予想よりはるかに重い質量を持つことが判明し,Glashow共鳴を起こすには6.3PeVもの高いエネルギーを持つニュートリノが必要と分かった。しかし現在,そして現在計画中の地球上の人工粒子加速器をもってしても,このような高いエネルギーを持つニュートリノを作り出すことは不可能なため、Glashow共鳴を実証できなかった。

一方で,銀河の中心にある超大質量ブラックホールからの巨大な放射エネルギーや,遠方宇宙の大質量星の終焉爆発といった極端な現象は,こうした高いエネルギーを持った粒子を作り出す可能性があると考えられていた。

2016年12月6日,反電子ニュートリノが,ほとんど光速に近い速度で宇宙から地球に飛来した。この反ニュートリノが地球の内部にまで到達し,地球を作る電子と激突したことで,たくさんの二次粒子(粒子のシャワー)を生成した。この現象は南極のIceCubeニュートリノ望遠鏡によって捉えられ,この現象こそがGlashow共鳴であったことが明らかになった。

この観測結果は,反ニュートリノと電子の間の衝突が6.3PeVという非常に高いエネルギーで起きたことを示し,Glashow共鳴が起きたことを示す明確な指標となった。

さらに,このGlashow共鳴は反電子ニュートリノにのみ関わる反応であることから,高エネルギー宇宙ニュートリノの中に反粒子が含まれることを世界で初めて実証する結果となった。

ニュートリノと反ニュートリノを区別して観測することを可能と示したこの成果は,素粒子物理学の理論実証に加え,ニュートリノ天文学の新たな展開としても重要な意味を持つという。今後,ニュートリノと反ニュートリノの比率から,直接測定が難しい天体の特性を調べられるようになることが期待されるとしている。

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