三菱電機は,運転中のドライバーのわき見や居眠りを検知する「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」のカメラを用いて,脈拍や血圧の変化などの生体情報を非接触で推定し,ドライバーの意識消失などの体調異常を検知する技術を開発したことを発表した(ニュースリリース)。
国内では,心疾患,てんかん,脳血管疾患が健康起因交通事故の三大要因となっており,意識消失などのドライバーの体調異常に起因した事故は,死亡や重症事故に繋がりやすいことから,事故予防が急務となっている。
体調異常を検知する技術として,DMSのカメラ映像から体調異常時の姿勢崩れを検知する技術がある一方,運転姿勢を保ったまま意識を消失するなどの姿勢崩れを伴わない場合も約50%(同社推定)あり,その対策が課題となっているという。
今回同社は,ドライバーの顔映像から,脈動に応じた血液流量の変化から生じる肌の明るさの微小な変化を抽出し,脈拍数脈拍間隔,脈の強弱,血圧の変化など複数の生体情報を推定できる独自AIを開発。従来では困難だった,DMSのカメラ映像を用いた生体情報の推定を実現しているとする。
この開発では,走行中でも顔の動きを安定して追尾するフェイストラッキング技術に加え,顔の複数カ所の肌の明るさ変化を分析して,車両の振動やドライバーの動き,車内に入り込む光の変動などの外乱要素を推定し,その影響を抑制する技術により,運転中の検出精度97%を実現。カメラによる非接触生体センシングにより,腕時計型の計測機装着などの煩わしさを軽減した。
また,体調異常時におけるさまざまな生体情報の変化から,同社AI技術「Maisart」により独自の特徴量を算出して体調異常を検知。心疾患による発作発生では,95.2%の精度で検知が可能だとしている。
生体情報を用いることで,体調異常で意識を失った際に姿勢崩れを起こさないドライバーに対しても体調異常の検知漏れを回避し,体調異常発生後3秒までの検知率は70%以上を実現。早期に体調異常を検知することで,自動停車するなどの対策が可能だという。
同社は大学病院との連携により患者データを蓄積しており,このデータを用いた検証および実車走行での評価・改善を進め,2025年以降の製品化を目指しているとする。