北医療大,キラル光電子分光の分子整列の影響を解明

北海道医療大学の研究グループは,光を利用した分子のキラリティの検出感度の上昇を目指して,多段階の光イオン化過程における,分子整列の影響を明らかにした(ニュースリリース)。

ある分子とそれを鏡に映した分子が異なる場合,それらの分子はキラル分子(あるいはキラリティを持つ分子)と呼ばれる。また,分子に光を照射すると,分子内の電子が放出されることがあり,放出された電子のことを光電子と呼ぶ。

キラル分子の光電子は,光の進行方向とその逆方向で放出される確率が異なり,この違いを利用して,分子のキラリティを検出できる。さらに,光電子の速度が大きい場合は,周囲の分子による光電子の散乱が少ない点や,飛び出す光電子の反跳でキラル分子が自発的に分離(いわゆる光学分割またはキラル分割)するなどのメリットが期待されている。

しかしながら,光電子の速度が大きい場合,検出感度が下がることが知られていた。今回,別の光を使って分子をあらかじめ整列させておくことで,光電子の速度が大きい場合でも,検出感度の低下を防げることが理論で確認できた。

具体的には,イオン化で飛び出す電子(光電子)が速い場合において,検出感度が最大20倍程度となる条件を発見したとしている。

その他関連ニュース

  • 北里大ら,円偏光発光を生むキラル誘起添加剤を開発 2024年02月22日
  • 北里大ら,分裂して変色するホモキラル二量体を合成 2023年11月15日
  • 分子研,円偏光でナノ構造の向きを観測 2023年10月10日
  • 東大,磁気キラル二色性を電場によって制御 2023年08月21日
  • 筑波大,ポリチオフェンの液晶中での合成に成功 2023年07月19日
  • 北大ら,立体制御不要なキラル高分子材料設計に知見 2023年06月16日
  • 北大ら,凝集で円偏光を発するキラルな白金錯体開発 2023年03月27日
  • 千葉大ら,光の螺旋性で結晶のキラリティーを制御 2023年03月01日