早稲田大学の研究グループは,新しい原理の無線回路(パリティ時間(PT)対称性共振結合回路(並列接続))を開発し,センサ感度が2000倍に改善することを確かめた(ニュースリリース)。
コンタクトレンズと電子デバイスを組み合わせた「スマートコンタクトレンズ」の実用化が進まない要因の一つに,無線システムの設計仕様によって性能(センサ機能,検出方式および消費電力)と価格(センサレンズ,無線計測器,レンズ素材)が大きく異なることがある。
研究グループは,量子効果を取り入れたパリティ・時間(PT)対称性共振結合回路(Gain-Loss結合回路,並列接続)を新たに開発することで共振結合系の高Q値化を実現し,共振回路型バイオセンサ(化学抵抗器:数百Ω)における微弱な抵抗変化(数Ω,これまでは計測が困難な信号)を増幅しながら測る無線計測システムを開発した。
このシステムは,検出器側に負性抵抗を搭載することで効果を得るため,従来型センサ回路をそのまま利用できる特長を有している。この技術によって,これまで計測が困難であった涙中糖度(0.1–0.6mM)の無線計測を実現した。
すなわち,健常者(平均値0.16±0.03mM,0.1-0.3mM)と糖尿病患者(平均値0.35±0.04mM,0.15-0.6mM)を数値で評価することが可能であり,世界で失明原因第1位の糖尿病網膜症の治療効果や予防に貢献し得るものとして期待されるという。
今回,高感度で高利得な無線センサおよび計測システムを構築することに成功した。血中乳酸を測定対象とし,敗血症が疑われる患者の乳酸濃度(0-4.0mM)を無線で測れることを確かめた。
研究グループは,高感度・高利得,かつ,体表および体内埋め込みなど目的とする無線計測システム(センサ・リーダ・システム)として,幅広く利用することができる成果だとしている。