名古屋大学,産業総合研究所,エビデント,日本水中映像,はてのうるま,鳥取県山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館,北海道大学は,世界的にも珍しい青紫色に発光するヒカリフサゴカイ属の3新種を新たに発見した(ニュースリリース)。
発光生物は世界には7,000種以上いるとされるが,発光機構の研究が進んでいるのはごく一部にすぎない。その要因の一つとして,種分類の困難なグループの存在があるため,日本にどのような発光生物種がいて,形や遺伝子配列を持っているかを明らかにする必要がある。
ヒカリフサゴカイ属は444nmと珍しい短波長の発光をすることから発光機構の研究が進められてきた。しかし,ヒカリフサゴカイの仲間は日本では1917年以降分類学的な研究がされておらず,種を同定することが難しい状況にあった。
研究では2016年から7年間採集を続け,先行研究において発光機構の研究に用いられるものも含め,日本の三重県菅島,石川県能登島,鳥取県岩美から標本を得た。
標本を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて観察し,遺伝子配列解析を行なったところ,それらは3種に分かれ,全て今まで知られている世界中のどの種とも一致しない新種であることが判明した。
そのためこれら3新種の形態を記載し,それぞれをオニビフサゴカイ,アオアンドンフサゴカイ,イケグチフサゴカイと命名した。また研究では新種を記載すると同時に,各種の発光を観察した。結果,全3種が青紫色の発光をすることが明らかになった。
このように分類学的な整理を行なう際に各種の発光生態をリンクさせることで,発光生物の研究に用いることが正確にできるようになる。研究は分類学者と発光生物学者がタッグを組むことで生まれた成果だとする。
ヒカリフサゴカイは青紫色の発光色を示す新規の発光機構を有すると考えられることから,今後も仕組みの解明・その応用を目指して研究が進められている。
この研究では種を整理し生物多様性を把握することができたため,研究材料の同定が容易になった。研究グループはこの成果が,ヒカリフサゴカイの発光生物学的な研究の基盤としてその発展を支えていくとしている。