豊橋技術科学大学の研究グループは,2つの炎を互いに近づけたり遠ざけたりすることで火炎のゆらぎを自在に制御できることを見出した(ニュースリリース)。
炎のゆらぎとは,普段から容易に観察される馴染み深いものである一方,不思議で面白い様々な様相を示す。例えば,一旦ゆらいでいる炎同士が干渉すると安定的なゆらぎモードだけが選択的に発現する。
炎の距離に応じて,同じ位相でゆらぐ「同位相モード」,逆の位相でゆらぐ「逆位相モード」が選択的に発現する。また,それらのモードではゆらぎの周波数が異なるといった不思議なことが起きる。
このように様々なゆらぐ状態が実現できるが,「ゆらいでいる炎を干渉させてゆらぎを止まる」ことを示した例はない。この状態は,過去に3つの炎をある配列にすることで実現されることが示されたが(動かない,という意味で「デス・モード」と名付けられた),何故それが2つの炎ではできないのかが明確になっていなかった。
そこで研究グループは,2つの炎同士の距離をある周期で近づけたり遠ざけたりすることでデス・モードを発現させることを見出した。炎と炎の干渉実験を行なうにあたり,徐々に近づけるまたは遠ざけると,途中でゆらぎが一時的に止まる。ところが,その位置に留めておくと,いずれまたゆらぎ始める。
最終的にはゆらぐので,その状態が安定状態であることはわかるが,安定状態に落ち着くまでの「遅れ時間」があるということは,その時間スケール内でゆらぎを静止できる状況を作れば,ずっと静止させられる可能性があることを意味する。
そこで,炎の距離を周期的に近づけたり遠ざけたりすることでこの予測が正しかったことを証明することができた。また,この理由は流体力学的な特性で説明できることを示した。
研究グループは,この研究の応用展開について現在は考えていないが,不思議な現象解明を通じて掘り下げるという,大学らしい基礎研究として,実験のみならず数値解析や理論解析を通じてさらに掘り下げる予定。
日本発の研究シーズを国際展開することで,日本ではこんな(役立たない)基礎研究が存分にできるのだ,ということを世界に向けて発信していきたいとしている。