理研ら,XFELと電顕で低分子有機化合物の構造解析

理化学研究所(理研),東北大学,高輝度光科学研究センターは,X線自由電子レーザー(XFEL)を用いて,低分子有機化合物の微小結晶から水素原子を含む詳しい構造解析が可能なことを明らかにし,XFELと電子顕微鏡の相補利用の有用性を示した(ニュースリリース)。

有機合成化学,薬学,材料科学などの分野では大きな結晶が得られない化合物が多いため,小さな結晶の構造解析が重要となる。電子線はX線に比べて試料に数万倍も強く散乱されるため,微小結晶の構造解析に利用されている。

一方,XFELは高強度かつ超高速のX線パルスを発生させることができる。1パルスで試料破壊前のデータ収集が可能であり,電子線の試料の散乱断面積との大きな差を補うことができると考えられる。

XFELパルスを用いた連続結晶X線構造解析(SX)は,多数の微小結晶から回折パターンを記録する。SXはこれまで主にタンパク質結晶に適用されてきたが,タンパク質よりも分子量が小さい低分子有機化合物の結晶では,カメラ1フレーム当たりの回折スポットの数が少なく,データ処理が難しいという課題があった。

研究グループはまず,X線の散乱が少ないポリイミド製の試料支持板(4mm×4mm)を新しくデザインし,その表面にローダミン6Gという有機蛍光分子の微小結晶を散布した。試料支持板を高速で動かしながら,径1μm程度に集光した15keVの高エネルギーXFELパルスを,10μmの間隔で微小結晶に照射し,X線回折パターンを大量に集めた。

並行し,高精度クライオ電子顕微鏡を用いて,ローダミン6Gの電子回折パターンを集め,構造を解析した。XFELで得られた回折データの処理には,電子線で得られた結晶の繰り返し周期に関する情報を与えた。

これにより,カメラ1フレーム当たりの回折スポットの数が少なくデータ処理が難しいという課題を克服し,既存方法に比べ約20倍高効率に処理できた。その結果,0.82Åの空間分解能でローダミン6Gの構造をXFELから決定することに成功した。

また,原子座標の信頼性はXFELの方が高く,一方で電子線は電荷に対して高い感度を持つことも明らかになった。これにより,分子機能と直結する構造特性を観察できることが示された。

今回,高強度かつ高速なXFELパルスを用いて,低分子有機化合物の微小結晶から詳細な構造を決定することが可能になった。さらに,XFELと電子顕微鏡で有機化合物の異なる特徴が明らかになった。

開発した手法は,微小結晶を用いることができ,特別な試料の処理を必要としない。研究グループは今後,より機能性の高い薬剤・材料分子のデザイン・開発が期待できるとしている。

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