東京農工大学の研究グループは,カメラの撮像素子であるCMOSイメージセンサを受信機に用いる光カメラ通信(Optical Camera Communication:OCC)について,従来32色が最高だった変調多値数(用いる光色数)を512色へと増加させ,世界記録を達成した(ニュースリリース)。
Optical Camera Communication(OCC)とは,送信機にLEDやディスプレーのような光源を,受信機にカメラを用いた可視光通信。デジタルデータを3色LEDの色へと符号化・変調して光信号として送出し,カメラで撮影した動画像の中から光を抽出し,そのRGB値などから信号を復調・受信する。
使用する色数(変調多値数)を多くするほど高速な情報伝達が可能になる一方で,受信側での色の識別が困難になるというトレードオフがある。通常のカメラを受信機に使った場合,人間が見て綺麗な動画像にするための加工(画像処理)が行なわれるため,光色のズレが発生し,正確な色の認識が困難になるという課題があった。
研究グループは,CMOSイメージセンサのRAWデータを出力可能なカメラを用いて,取得したセンサデータをニューラルネットワークにより補正し,さらに誤り訂正符号を用いることで,512色での4mエラーレス伝送に成功した。この結果により,実験的には32色による数十cm程度の伝送が最高だった従来の記録を大幅に更新し,世界記録を達成した。
研究グループはこの成果により,OCCのボトルネックだった通信速度の低さを大幅に向上させる可能性が拓けたとする。今後,サイネージからの発光に対してデジタルデータを重畳させた広告配信サービスや,ドローン等の移動体のカメラを用いたデバイス間通信などへの展開が見込まれる。
また,非常に安価なLEDを送信機として用いる特長から,環境センシングへの活用によるスマート農業やカーボンクレジットの枠組みへの貢献が期待されるとしている。