富士通は,世界最高クラスの光1波あたり1.2Tb/sの大容量長距離伝送が可能な光伝送プラットフォームを実用化,「1FINITY Ultra Optical System」として2023年度上期より,日本や北米をはじめグローバルに提供する(ニュースリリース)。
この製品は,通信インフラの拡大や,それに伴う脱炭素化への取り組みを背景に,高信頼かつ低コストで運用可能だとする光伝送プラットフォーム製品。トランスポンダー(光送受信機)「1FINITY T900」およびラインシステム(光波長多重装置)「1FINITY L900」で構成される。
「1FINITY T900」は,光1波あたり1.2Tb/sの世界最高クラスの大容量データ送信を実現した光送受信機。新たに開発した高性能コヒーレントDSPおよび超高速CDM(Coherent Driver Modulator)を採用し,135Gbaudの高速信号伝送が可能。さらに,独自のクローズドループ水冷技術により,従来の空冷システムと比較して2倍の冷却能力と発生する騒音の50%低減を実現した。
また,ラインシステム「1FINITY L900」では,光ネットワークで一般的に使われるCバンドの波長帯域に加えて,より波長の長いLバンドの帯域の波長も扱うことで光ファイバー1本あたりの通信容量を拡張可能な技術,C+L ROADMアーキテクチャーを採用した。
加えて光信号を送信する際に,伝送路上で信号を増幅することで,到達距離や伝送容量を向上させることができるフォワードラマン増幅も実用化した。これらの技術により,ネットワークインフラの拡張性の向上に寄与しつつ,必要なトランスポンダーの設置数と消費電力を削減し,光ネットワーク全体の脱炭素化に貢献するという。
従来型の光波長多重装置では,ケーブル配線の複雑化や設置性の面で課題があったが,「1FINITY L900」にはスマート・ファイバー・ケーブル・システム(装置内部で光ファイバー接続を事前にインストールする光バックボード方式)により,ケーブル配線の複雑さを従来比で80%以上削減し,かつ設置時および試運転中のトラブルシューティングを数時間から数秒に短縮できる。
伝送状況や断線箇所などの光ファイバーの状態を測定解析するOTDRや,疑似的な波長を用いて,伝送経路の品質の確認が遠隔操作でできるPseudowave(スードウェーブ)技術を機器内部に組み込むことにより,ネットワークの管理をより簡便かつ効率化することも可能となる。
同社は将来的に,広域ネットワーク運用・管理ソフトウェア「FUJITSU Network Virtuora NC」と組み合わせることで,機械学習を用いたネットワークの運用やリソースを最適化できるサービスを提供する予定だとしている。