富山高等専門学校,富山大学,九州大学は,2種類の金属元素で構成される合金型金属ナノ粒子を担持した基板を作製し,一酸化炭素酸化反応(CO酸化反応)の触媒として機能することを明らかにするとともに,粒子合成からナノ触媒担持基板の作製を,およそ2時間程度かつワンプロセスで完了することに成功した(ニュースリリース)。
近年,2種類の金属で構成されるナノ粒子(コンポジット粒子)が,1種類の金属元素で構成される粒子(単一金属粒子)と異なる特性を示すことが明らかになり,ナノ粒子の高機能化が期待されている。
この特性の変化は,ナノ粒子を構成する各元素の空間配置(ナノ構造)と元素の構成比(モル分率)に影響するため,高機能なコンポジット粒子の作製には,ナノ構造とモル分率の調節が不可欠となる。
これらの要素を調節するナノ粒子合成法はこれまでに報告されているが,複雑な金属前駆体の合成や高価な機器を使用する必要があった。また,ナノ粒子担持触媒を得るためには,合成したナノ粒子の含浸や焼成などの複数の工程が必要だった。
研究グループは,ナノ粒子の気相合成法である蒸発濃縮法(EC法)に着目。EC法は,バルク状の金属の加熱により金属元素を蒸発し,蒸発した元素の再凝縮によりナノ粒子を得る方法。安価な管型電気炉を用いて,加熱のみでナノ粒子が作製できる。
そこで,2台の電気炉を接続した二重蒸発濃縮法(DEC法)を考案し,金及び銀で構成されるコンポジット粒子の作製を行なったところ,特筆すべき成果として以下の3つががあった。
①バルク状態の金及び銀をそれぞれ電気炉で加熱することで,合金型ナノ構造のコンポジット粒子が得られた。また,還元剤や粒子安定化剤などを用いないため,粒子表面に有機物の無い純粋なコンポジット粒子を得ることができた。
②電気炉の加熱温度を変えることで,ナノ粒子に含まれる金と銀のモル分率が変化することを発見した。モル分率の変化はSPR波長の変化としても観察された。
③気相で生成したナノ粒子は,窒素ガスの流れに乗り,そのまま下流に設置した基板(ガラスもしくはシリコン)に積層した。この粒子が積層した基板を一酸化炭素と酸素の混合ガス中に設置し加熱すると,二酸化炭素の顕著な増加が確認された。また,このCO酸化反応は,金もしくは銀の単一金属粒子と比較して,Ag-Au合金粒子のほうが高い触媒活性を示した。
このナノ粒子合成法は,バルク状金属の蒸発温度に依存しており,金や銀だけでなく様々な元素に応用できるため,研究グループは,これまで作製困難であったコンポジット粒子の作製に有利な手法となるとしている。