北大ら,hBNの⼤⾯積化とグラフェン集積に成功

九州⼤学,⼤阪⼤学,産業技術総合研究所は,均⼀な多層の六⽅晶窒化ホウ素(hBN)を合成し,それを⽤いて⼤規模なグラフェンデバイスの特性向上につなげることに成功した(ニュースリリース)。

グラフェンや遷移⾦属ダイカルコゲナイド(TMDC)などの⼆次元材料は,それを構成する原⼦のほとんどが表⾯に出ているため,設置する基板の凹凸や電荷,表⾯に吸着した酸素や⽔などに影響を受けやすい。

絶縁性の⼆次元材料であるhBNがこの問題を解決すると期待されている。これはグラフェンと同じ六⽅格⼦からなり,原⼦的にフラットな構造をもつ。グラフェンの上下を多層hBNで保護すると,グラフェンの本来の特性が現れ,電気・光特性が格段に向上する。また,TMDCにおいても,多層hBNはキャリア移動度や発光効率などを向上する。

しかし,多層hBNを⼤⾯積に均⼀に合成する技術は確⽴されておらず,単結晶hBNからテープによって剥離した剥離⽚で研究が⾏なわれている。今回研究グループは,多層hBNの⼤⾯積合成を試みた。得られた成果は⼤きく以下の3点。

①多層hBNの合成
ホウ素と窒素を含む原料であるボラジン(B3N3H6)を⾼温下で反応させる化学気相成⻑法(CVD)を⽤いてhBNを合成した。FeとNiを主成分とする市販の合⾦箔を⽤い,厚みが2〜10nm の⼤⾯積の多層hBNの合成に成功した。なお,CVDで⽤いる合⾦箔は,ボラジン原料の分解,ならびに窒化ホウ素の⽣成に重要な役割を果たすという。

②hBNの転写とグラフェンとの積層
次に,多層hBNの特性評価のため,グラフェンとの積層について検討を⾏なった。多層hBN,グラフェンともに転写が必要で,⼆次元材料の品質に⼤きな影響を与えるプロセス。多層hBNの転写においては,電気化学法が好ましいことが明らかになった。これにより,グラフェンをhBNで挟み込んだ構造も⼤⾯積に得られた。

③グラフェンとhBNの積層デバイスの特性評価
合成した多層hBNがグラフェンの特性向上に寄与するかどうか,評価を⾏なった。11層の多層hBNの最表⾯に1層のグラフェンが存在することを確認し,電気化学法の⽅がエッチング法よりも⾼い移動度を⽰すこと,ならびにグラフェンの上下をhBNでサンドイッチすると移動度の向上効果が最も顕著に現れることを⾒出した。

今回研究グループは,多くのデバイスを作製して評価し,cmスケールの基板全体にわたってhBNの効果が⾒られることを⽰した。 これは,今後の半導体産業に⼤きく貢献する成果だとしている。

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