農工大,可搬グラフェンセンサでカドミウム検出

東京農工大学の研究グループは,半導体微細化技術によって小型化したグラフェンセンサと自作のポータブル検出器を利用して重金属の一種として知られるカドミウム化合物の溶液中での検出に成功した(ニュースリリース)。

重金属化合物は,太陽電池や光センサ等多岐に渡る分野で利用されているが,高い毒性を有しており,漏出した際に早期検出できる技術が求められている。中でもカドミウム化合物は高い生体毒性が知られているが,従来,これら重金属の検出には専門機関による高価で大型な分析装置が必要だった。

そこで研究では,開発してきたグラフェンセンサを社会実装する上で重要な小型マルチチャネル電流検出器を自作し,持ち運び可能なセンサ系を利用した溶液中でのカドミウム化合物の検出を目指した。

まず研究では,グラフェンセンサの社会実装時に重要になる小型のマルチチャネル電流検出器の作製した。従来は,それぞれ数百万円以上する比較的大型(数kg程度)の装置を利用して2ch程度の計測を行なっていた。

今回,マルチチャネル電流計部分をプリント基板上に作製することにより計測器の小型化(100g程度)と24chのマルチ測定を低価格(5万円以下)で実現した。次に,カドミウム化合物の検出に当たりグラフェン電界効果トランジスタ(FET)を作製し,グラフェンFET上にカドミウム化合物を捕捉可能なキレート剤を修飾することによりグラフェンを利用したカドミウムセンサを作製した。

キレート剤としてterpyridineを用いた場合,50µM以上の塩化カドミウム溶液の導入に対し,鋭敏に応答し,5分以内での塩化カドミウムの検出に成功した。更に,複数のキレート剤を修飾しグラフェンセンサアレイを作製し,3種類のカドミウム化合物の同定試験を行なったところ,カドミウム化合物に対応したセンサ応答の違いが観察された。これにより,水中のカドミウム化合物の同定が可能と考えらるという。

今回得られた結果は,事故等で水中に漏出したカドミウム化合物の早期検出への有用なツールになりえることを示すもの。更に,水中でのカドミウム化合物の同定が可能であることから,漏出したカドミウム化合物の種類をいち早く評価可能なセンサ開発が可能になるという。また,他のキレート剤を用いることにより他の重金属化合物へも検出対象を広げ,水中の重金属汚染の早期発見が可能なセンサデバイスが実現できるとしている。

研究グループは今後,重金属の検出や,グラフェンセンサのマルチチャネル計測を実現したい企業や研究者との共同研究関係を構築し,社会実装に向けて研究を進めるとしている。

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