千葉大学の研究グループは,絶縁体材料の表面に溜まっている静電気を非接触で高感度に検出・可視化する技術を開発した(ニュースリリース)。
これまで静電気を計測・可視化する⼿法として,表⾯電位計や帯電トナーなどが広く⽤いられてきたが,空間分解能に乏しく試料を汚染してしまい,材料の識別性にも乏しかった。
研究グループは,これまで材料表⾯や界⾯の分⼦の情報を選択的に計測・評価する⼿法として,和周波発⽣分光法(SFG分光法)を⽤いた有機物界⾯の評価・解析技術の研究を進めてきた。SFG分光法は⾼強度のパルスレーザー光を使った分光法の⼀種で,⾚外光と可視光を同時に照射することで発⽣するSFG光を検出する。
SFG分光法は,試料に電界が存在する時には,その電界の強さに応じて得られるSFGの信号強度が増加する「電界誘起効果」があることが知られている。研究グループはこれまで,電界誘起効果を⽤いることで,有機デバイスを駆動したときに,内部に存在する電荷の情報を⾼感度で選択的に調べる計測技術を開発してきた。
今回,絶縁体試料であるポリプロピレンが帯電した際の表⾯についてSFG分光法を⽤いて分⼦の状態を調べ,表⾯のSFGスペクトル強度が表⾯電位に応じて強くなる現象を観測し,静電気による電荷が作り出す電界によって電界誘起効果が⽣じることを初めて⽰した。
さらに,ポリメチルメタクリレート(PMMA・アクリル樹脂)の上に,有機薄膜としてステアリン酸アミドを薄く塗布して帯電によるSFGスペクトルを調べてみると,試料の帯電によって表⾯に存在する電荷に由来する電界が,下地となっているPMMA試料の内部にまで広がっていることを⽰した。
さらに,ポリプロピレンを部分的に帯電させた際の表⾯の状態について2次元マッピングすることに挑戦し,微⼩な領域(〜0.3mm)での不均⼀な帯電を⾒分けることが出来た。
またこの帯電した試料を⼀晩放置した後に再度測定したところ,表⾯電位では0Vを⽰しているにも関わらず,SFGの⾯内マッピングイメージではわずかに帯電が残っていることがわかり,このことは,SFG分光が表⾯にごくわずかに残っている静電気でもその影響を検出出来ることを⽰している。
静電気による帯電は,分⼦レベルの情報については現在に⾄るまで殆どわかっていなかった。研究グループは今回の成果から,材料の違いによる帯電特性の違いや,摩擦,接触帯電の起源,メカニズムに迫ることを⽬指すとしている。