千葉大,火災が大気環境へ及ぼす影響の大きさを確認

千葉大学の研究グループは,バイオマスバーニング(火災)と人為起源エアロゾルの両方の影響を受けるインドシナ半島で,米NASAが開発した再解析データMERRA-2を活用し,近年の中国南部の大気質改善がインドシナ半島の大気質改善に寄与していることを明らかにした(ニュースリリース)。

バイオマスバーニングでは主に光を吸収するエアロゾル(⿊⾊炭素や有機炭素)が排出される。⼤規模なバイオマスバーニングが発⽣する世界有数の地域の⼀つにインドシナ半島があり,乾季の10⽉–5⽉に発⽣し,1–3⽉に活発となる。

加えて,同地域は東アジアから光を散乱する⼈為起源エアロゾル(硫酸塩エアロゾル)の輸送が確認されている。バイオマスバーニングの影響と相まってエアロゾルの光学特性(散乱・吸収など)は複雑なため,インドシナ半島におけるエアロゾルの定量的理解は,エアロゾルの包括的な理解のために欠かせない。

研究では時空間的に均質な再解析エアロゾルデータのMERRA-2を活⽤し,バイオマスバーニングと⼈為起源のエアロゾルが⼤気環境へ及ぼす影響を定量的に解析することを⽬標とした。

まず,インドシナ半島中央のタイ・ピマイに設置されている地上観測装置によって,MERRA-2の光学特性の精度検証を⾏なった。乾季においてMERRA-2はエアロゾルの光学的深さ(AOD)を過⼩評価しており,MERRA2の地表付近の光吸収性エアロゾル排出量が不⼗分であることが⽰唆された。

次に検証されたAODを利⽤して,インドシナ半島の季節変動要因についての解析を⾏なった。光吸収性を持つ有機炭素AODはバイオマスバーニングが活発な1-3⽉に特に⾼い割合を⽰し,光散乱性を持つ硫酸塩AODの割合は⼀年を通して全体の25%以上を占めていることが分かった。

最後にインドシナ半島の年々変動について解析を⾏なった。インドシナ半島の北東には中国が位置しており,モンスーンの影響で10⽉にエアロゾルの越境輸送が確認されている。そこで,中国南部(SC)とインドシナ半島のエアロゾルの光学特性の関係性の解析を2009年から2020年に⾏なった。

特に,中国南部⾵下の北東インドシナ半島(NEIC)では硫酸塩AODが減少傾向にあった。硫酸塩エアロゾルの前駆物質である⼆酸化硫⻩(SO2)の排出量が中国南部で減少傾向であることから,インドシナ半島の⼤気質の改善に中国からの⼈為的なエアロゾルが⼤きく寄与していることが⽰唆された。

この知⾒は,バイオマスバーニングの影響を受ける地域における再解析エアロゾルデータの再現性向上に役⽴つことが期待されるという。研究グループは観測データを活⽤した突発的な森林⽕災や⻑期の⼤気汚染物質のモニタリングを今後も継続し,環境対策への貢献を⽬指すとしている。

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