浜松ホトニクスは,光半導体素子と分光光学系を一体化し,200nmから900nmまでの光の波長範囲において,2,500,000:1と極めて高いダイナミックレンジで強い信号と弱い信号を同時に測定することができる分光器の最上位機種「OPAL-Luxe(オパール リュクス) 高ダイナミックレンジ分光器 C16736-01」を開発した(ニュースリリース)。
物質の光吸収量の測定において,分子には固有の振動があり,そのエネルギーに起因する特定の波長の光を吸収する性質を利用する。このため,試料に光を照射し透過や反射した光を測定することで,試料に含まれる成分の種類や量を分析することができる。
同社は,紫外光から近赤外の領域に感度があり,その範囲の波長を同時に測定できるマルチチャネル型の分光器を開発,製造,販売しているが,従来製品はダイナミックレンジに限度があった。このため,例えば光の吸収量が大きく異なる成分が含まれている試料の成分分析では,測定条件を調整し複数回の測定を行なう必要があった。
また,強い信号と弱い信号が同時に存在するプラズマ発光において,弱い信号を精度よく分析するためには,強い信号をフィルタでカットする必要があった。同社は,これらの計測の効率向上に向け,高ダイナミックレンジ分光器の開発に取り組んできた。
今回,独自の設計技術を応用し光半導体素子の構造を工夫するとともに,独自のソフトウェア技術により,極めて高いダイナミックレンジを実現した。この結果,200nmから900nmの光の波長範囲において,従来製品の約100倍となる2,500,000:1と超高ダイナミックレンジで強い信号と弱い信号を同時に測定することができる分光器の開発に成功した。
また,独自の光学設計技術により,分光器に組み込む光学系の設計を工夫し,トレードオフの関係にある高感度と高波長分解能を両立するとともに,迷光の発生を抑えることで測定精度を高めているという。
光の吸収を利用する成分分析装置にこの製品を組み込むことで,試料に多く含まれる光の吸収量が多い成分と,吸収量が少ない微量成分を高い精度で同時に分析することができる。この結果,薬品や化学品などの品質管理において,複数回の測定を行なうことなく微量に含まれる不純物を検出できることから成分分析の効率を高めることができる。
また,強い信号と弱い信号が同時に存在するプラズマの発光を高精度に分析することで,プラズマの応用研究が進むことも期待されるとしている。