プラウドら,単結晶赤外線レンズをモールド成形

プラウドと京都大学は,研削研磨法でしか加工できなかった赤外線透過光学レンズ用単結晶シリコン,単結晶ゲルマニウムについて,材料に大電流を流しながら加圧成形する「直接通電加熱法」によるモールド成形技術を開発し,小型成形実験機を完成した(会社HP)。

車載ナイトビジョン,見守り,セキュリティ,インフラ管理,エネルギー管理など,赤外線カメラ(サーモグラフィ含む)の用途拡大が急速に進むと予測される中,赤外線カメラのコストダウンや性能改善が強く求められている。

しかし,主要部品である赤外線透過レンズは,安価なシリコンレンズは球面レンズしか製造できず性能に制約があり,単結晶ゲルマニウムレンズやカルコゲナイドガラスレンズは高価な海外資源に依存するうえ,任意形状に成形できるカルコゲナイドガラスは,材料特性ばらつきや機械的強度に課題がある。

そこで研究グループは,「直接通電加熱法」によるモールド成形技術を開発に取り組み,その結果,単結晶ゲルマニウムレンズの成形温度600°C,国内で大量生産され安価な単結晶シリコンレンズの成形温度900°Cと,ガラスレンズ成形に用いられる金型が使用できる温度域での成形技術を確立し,雰囲気温度を最適条件に制御することでガラスレンズ成形速度に準ずる加工速度も実現した。

さらに,この実験機を用いて,成形型に形成したナノ周期構造を単結晶材料表面に転写するナノインプリント法の研究を行ない,500nmオーダーのグリット形状が転写でき,透過特性の劣化が無く,偏光特性が得られることを確認したという。この技術は,偏光子,偏光子アレイ,イメージングカメラなどへの展開が期待されるもの。

なお,単結晶材料の融点より300°C~500°C低い温度で,赤外線の透過特性を劣化させる結晶欠陥の発生を抑えながら塑性変形させる「直接通電加熱による低温変形メカニズム」については京都大学が研究を進め,2020年に論文発表している。

これらの技術確立により,単結晶シリコンレンズでは非球面化によりレンズレンズ性能の改善,単結晶ゲルマニウムでは非球面レンズや回折レンズの実用化や微細形状の最適化でレンズ枚数の削減によるコストダウンが期待できるとともに,レンズ成形で確立した技術は,マイクロレンズアレイや偏光子アレイへの展開,リソグラフィの代替技術として展開可能性があるという。

モールド成形技術の問題点として,金型が高価で長納期という欠点があるとするが,プラウドはこの改善のため。安価で加工しやすい材料を母材にして成形面を硬質化処理する成形型の実用化に取り組んでいくとしている。

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