矢野経済研究所は,MEMS技術やMEMSデバイス世界市場を調査し,材料別や微細加工技術別,デバイス分類別,システム(需要分野)別,IDM・ファウンドリー別の動向,研究機関の動向,将来展望などを明らかにした(ニュースリリース)。
MEMSプロセスは,半導体製造プロセスと同じ過程,つまり微細加工技術を駆使するものなので,一般的に小型・軽量・量産性・低コストなどが特長となることが多い。したがって,旧来の方式で作製されていたデバイスをMEMS方式に切り替えることによって,こうしたメリットを享受することが出来るようになる。
そのため,マーケットにおいて競争力の高い魅力的な商品が誕生することが多い。さらに,MEMS技術の採用によって高機能などの付加価値が加えられるなら,さらに魅力が増すことになる。
MEMSデバイスの製造は,半導体製造と同様に自社で設計・製造・販売まで行なう垂直統合型メーカーであるIDM(Integrated Device Manufacturer)と受託製造に特化した企業であるファウンドリーに大きく分けられる。調査によると,ファウンドリーを除くIDMを対象とした,2022年のMEMSデバイス世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)は1兆5,205億円の見込みだという。
MEMSデバイスは幅広い分野の多様な製品で高付加価値化を支えるキーデバイスとなっており,プリンターのインクジェットノズルや,自動車のエアバッグ,スマートフォンやゲーム機等で使われる加速度センサー,プロジェクターで光を制御するデジタルミラーデバイスなどに使用されている。
分類別に2022年の市場規模をみると,スマートフォンの無線通信等で使われる高周波(RF)デバイスが最も大きく,全体の23.9%を占めている。次に自動車のエンジンや血圧計,気圧計などの圧力センサーで13.9%,電子機器用の小型マイクロフォンが10.5%と続いている。
MEMSデバイス世界市場は,2020年から2025年までのCAGR(年平均成長率)が10.2%となり,2025年の同市場規模は2兆360億円になると予測する。MEMS技術はここ50年ほどの間に飛躍的に進化し,現在では自動車やスマートフォンなどほとんどの電子機器にMEMSデバイスが搭載されるようになってきている。
スマートフォンには最先端の半導体技術が詰め込まれているが,さらにMEMSデバイスが加わり様々な機能を持ったマイクロデバイスが採用されることで,かつてのHPC(high-performance computing)クラスのコンピューターが手のひらサイズにコンパクト化されるまでに進化を遂げた。まさに,現代社会はMEMS技術の進化によって大きな恩恵を受けているとしている。