水産研究・教育機構(水研機構)は,いか釣漁業において,従来光源のメタルハライド(MH)船上灯から転換し,新たな漁灯光源である発光ダイオード(LED)を利用することで,漁灯出力の削減による省エネルギーと収益性の改善を目指すための実証調査を行なった(ニュースリリース)。
スルメイカの漁獲量は平成23年度の約4万トンから,令和3年度には約6千トンまで減少しており,近年の燃油価格高騰も重なり本漁業の経営は不安定になっている。現在のいか釣漁業の主要漁灯であるMH船上灯は,航走や操業を含めた全体の燃油消費量のうち約3~4割を占めており,いか釣漁業は漁獲物の単位生産量あたりのCO2排出量も他の漁船漁業に比べて多くなっている。
そこで研究グループは,いか釣漁業で従来光源のMH船上灯に代わるLED船上灯を用いた実証調査をした。平成25年度と平成26年度の調査ではMH船上灯とLED船上灯の両方を装備した中型いか釣漁船を2隻用いて基礎試験をした。
この基礎試験の結果に基づき,平成27年度からLED船上灯(MH190~250kW相当の明るさ)を装備した中型いか釣漁船(以下:調査船)とMH船上灯を装備した中型いか釣漁船(以下:当業船)とで同時期に同海域に比較操業試験をした。
その結果,当業船に比べて調査船は燃油消費量を約2~3割削減して燃油経費を軽減できた。加えて,当業船に比べて調査船はアカイカの漁獲量を約1割増やすことができ,調査船の年間の漁労収支は当業船と同等かそれ以上になったという。
昨今は世界的にCO2排出量規制が求められ,我が国ではCO2に代表される温室効果ガスの排出量を2050年までに全体で実質的にゼロとするカーボンニュートラルを目指すことが宣言されている。研究グループは,LED船上灯の導入は経費削減に繋がるとともに,CO2排出量抑制にも寄与するものだとしている。