近畿大学と太洋工業は,「機能性セラミックス薄膜複合フレキシブル基板」を開発した(ニュースリリース)。
一般的に電子機器は,製造された基板にセラミックス等からなる電子部品を半田で実装し,通電することで電子機器としての機能性を示す。セラミックス等からなる電子部品は一般に硬くて脆いことから,屈曲性の必要な部位や,曲面に沿わせる状態の使用は不可能だった。
それと共に,セラミックスの製造時には数百から1000℃程度の加熱・焼成が必要となることから,耐熱性の劣る樹脂フィルム,及び樹脂を使用する基板材料上に直接形成することはできない。
FPCなど樹脂を使用する基板材料上に機能性セラミックス薄膜を転写する従来技術では剥離・ひび割れが深刻だったのに対し,機能性セラミックス薄膜を電極とともに転写する近畿大学の独自技術では,現状用いられている機能性セラミックスの性能はそのままに,剥離・ひび割れなく機能性部品と基板全体を柔軟性のあるシート状のデバイスにすることが可能だという。
開発した機能性セラミックス薄膜複合FPCでは,近畿大学の研究グループの単結晶薄膜転写技術と,太洋工業のFPC加工技術を組み合わせて応用することにより,FPCに形成した電極上に直接,機能性を有するセラミックス薄膜を接合し,通電により機能性を発現させることに成功した。
現段階ではフレキシブルPb(Zr,Ti)O3単結晶薄膜とFPCの複合化を実施しており,柔軟性かつ強誘電性を示し,圧電素子として機能することが確認できており,従来のセラミックスの塊を実装する技術では成し得なかった活用が可能になるとする。
具体的な使用用途としては,全体がフレキシブル化されたシート状の超音波素子を想定しており,人体をはじめ交通・水道など各種インフラの形状に沿った非侵襲の超音波画像診断装置の応用や,指紋・静脈認証等の各種デバイスの入力用センサとしての応用,柔軟な性状を生かしたIoTデバイス向け発電素子としての応用等を見据えて社会実装を目指していくという。
研究グループは今後,2023年度中のサンプル出荷を目指し,詳細なスペック調査や最適化等,更に開発を進める予定としている。