茨城大,緑藻から脂質と色素を同時に高効率培養

茨城大学の研究グループは,光合成微生物である緑藻コーラストレラ(Coelastrella sp.)の新株の単離・純化に成功し,その株を用いて有用な脂質と色素を短期間で同時に高効率生産させる培養方法を開発した(ニュースリリース)。

優れた光合成能を有する微細藻類を活用したモノづくり(バイオリファイナリー)が注目されている。研究では,有用な「脂質」や「色素」を大規模培養により同時に生産できる能力を有した「有用天然藻」を自然界より単離し,高効率生産の培養条件を検証するとともに,得られた細胞抽出液の機能を解析することを目的とした。

神奈川県湘南地方の水域より採集した微細藻類の単離と純粋培養に成功し,Coelastrella sp. strain D3-1と命名した。この株は,30℃付近で高い増殖力を示すが,30℃以上での生育状況や脂質と色素の効率的な共生産の培養条件についてはよくわかっていなかった。

はじめに,脂質の効率的な生産条件を検証したところ,2~3%炭酸ガスを充填させた培養装置内で100μmolフォトン/m2/秒のLED光量子量を照射しながら30℃で5〜6日間振とう培養するだけで,C16:0,C18:1を主成分として含むFAMEs(脂肪酸メチルエステル)について,乾燥菌体重量あたり20〜44%(w/w)という高い生産能を示した。

C16:0 (パルミチン酸)やC18:0(オレイン酸)は、燃料よりもむしろ飲食品等に向いた成分。一方,他の培地を用い同様の培養条件でD3-1を培養したところ,乾燥菌体重量あたり約38%の色素蓄積が認められ,赤色生育相における5種類の成分のうち,βカロチンから生合成される脂溶性赤色素のエキネノン/カンタキサンチン/アスタキサンの3成分が占める総和は,5種類の主要な色素中で90%近くを占め,この株の高い生産力を示した。

更に,環境ストレスに対する耐性について検証した結果,pH2~11,高温(40~60℃),紫外線照射,H2O2暴露,凍結・融解に有効性を示す,頑強な株であることが示唆された。これは屋外大規模培養に向いており,今後の活用において期待が持てるという。

一方,クロロフィルaを主成分として含む緑色素のエキス並びにエキネノン/カンタキサンチン/アスタキサンを主成分として含む赤色素のエキスは,それぞれ高い抗酸化能や抗炎症作用を有していることを発見した。

研究グループは今後,大規模培養へのスケールアップと有用物質のコスト安な回収・製造法が課題となり,あわせて更なる機能解析が期待されるとしている。

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