横浜国立大学の研究グループは,マイクロメートル厚の透明セラミックス結晶の高効率製造技術を確立した。(ニュースリリース)。
産業用や医療用の非破壊検査装置の高機能化に向けたキーマテリアルとして,マイクロメートル厚のシンチレータ結晶がある。従来は,2000°C以上の超高温の原料融液から育成した大型の単結晶インゴットを,切断・研磨することで薄片化していたが,製造コストや材料廃棄物の発生が課題だった。
研究では,化学気相析出法を用い,原料ガスから1~25μm厚の透明なシンチレータ結晶を低温かつ高速にオンデマンド製造できる技術を確立した。具体的には,自作の化学気相析出装置を用いて,下地基板上に1~25μm厚のCe3+添加LuAG結晶を形成した。
原料ガスとしてルテチウム(Lu),アルミニウム(Al)およびセリウム(Ce)元素の有機金属化合物と酸素ガスを用い,下地基板には,市販のイットリウムアルミニウムガーネット単結晶を用いた。レーザー源には炭酸ガスレーザーを用いた。
α線照射に対するシンチレーション特性評価は,241Am線源と光電子増倍管を用いた測定系をセットアップし,X線撮像試験は,汎用X線源とCMOSカメラを組み合わせた撮像系を自作した。LuAG結晶中でのα線およびX線の侵入深さに対するエネルギー吸収量は,SRIMおよびXCOMを用いた数値計算により見積もった。
Ce3+イオンを微量添加したLuAGシンチレータ結晶を製造したところ,結晶成長に要した温度は900°Cであり,LuAGの融点(2048°C)の半分以下だった。所要時間はわずか1~30分であり,一般的な気相成長法の数十~数百分の一だという。
結晶の厚みを変えてα線照射に対するシンチレーション発光収率を調べたところ,15μmの厚みを持つ結晶が最も高い発光収率(31000 photons per 5.5 MeV)を示し,シミュレーション結果と一致した。この発光収率は,市販のLuAG単結晶(1mm厚と30μm厚に加工されたもの)の値(17000–21000 photons per 5.5 MeV)を凌駕している。
これは,この技術により高品質シンチレータ結晶の製造が可能であることを示唆するもの。この結晶をシンチレーションスクリーンとして用いたX線撮像試験では,メモリーカード内部の電子回路の明瞭な透過像を得ることができたという。
研究グループは,この技術の対象材料はシンチレーション結晶に限定されず,様々な機能性結晶に適用することが可能だとしている。