北里大ら,高輝度の円偏光発光を示す色素を開発

北里大学と京都府立大学は,複数の発光色素骨格をねじりながら環状につなげた3種類のキラル分子を設計し,高輝度の円偏光発光(CPL)を示す色素を開発した(ニュースリリース)。

円偏光を利用した発光材料は,三次元表示ディスプレーやセキュリティー関連で使用される潜像インクなどへの応用が期待されている。円偏光を光源として利用するには通常,偏光子によって生成した直線偏光にフィルターを通じて取り出す。

一方で,キラルな分子構造を持つ有機蛍光色素が直接円偏光を発光し,この現象は円偏光発光(CPL)として知られている。CPLは発光がすでに円偏光であるため,フィルターを必要としない新しい光学デバイスの設計が可能となる。

優れたCPLを示す分子の開発にあたっては,①高い円偏光度を達成することと,②十分な輝度をもつことが必要だが,CPLは分子の励起状態に起因する現象であり,理論的な予測が非常に困難な状況にある。そのため,①,②の双方を満たす発光材料に向けた分子設計の指針は未解明なままだった。

研究では,よく光る「ナフタレン-フェニレン-ナフタレン」ユニット(NPN)をねじりながら環状につなげた分子を3種類(鏡像関係にあるR体とS体で合計6分子)合成した。

NPNはキラリティをもたないため,円偏光を示さないが,これを「ねじれ」を生むユニットである軸不斉ビナフチルと繋ぎ合わせることで,キラルな構造となり円偏光を示すようになる。また,両サイドからアルキル基で固定することで,ナフタレンの熱振動を制限し,特性の向上を目指した。

これらの分子は有機溶媒中で強い蛍光発光を示す(蛍光量子収率φ=0.60-0.79)。加えて,構造に由来した顕著なCPL特性を示すことがわかった。通常,CPLにおける円偏光度をg値で表すが,開発した分子はg=3.9-5.3×10–3で,通常の有機化合物よりも高い値を示す。

一般に,発光効率(量子収率)と円偏光度はトレードオフの関係にあり両立は困難だが,研究ではNPNを「キラルに」かつ「環状に」組み込むことで高いg値をキープしつつ発光効率を高めることに成功した。

また,開発した分子は高い吸光度をもつ。したがって,光源としての明るさの指標である輝度が高く,円偏光度を加味したCPL輝度も通常の有機化合物よりはるかに高い値を達成することができた(BCPL>100)。

研究グループは今後,円偏光有機EL材料に向けた有望な発光分子の開発と,それに続く円偏光を利用した三次元表示ディスプレーの開発が大きく前進するとしている。

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