千葉大学の研究グループは,新型コロナウイルスの感染拡大が急速に進行した2020年に焦点を当て,地上や衛星などから得られた日本の首都圏の大気データを統合して解析し,二酸化窒素(NO2),ブラックカーボンなどの光吸収性エアロゾル,ホルムアルデヒド(HCHO)の大気中濃度のウィークエンド効果(週末と平日の濃度差をもたらす効果)が例年に比べて顕著に増大していたことを明らかにした(ニュースリリース)。
NO2は地表付近では数時間で消失するので発⽣源近傍で⾼濃度を⽰す。そのため,NO2は⼈為的な排出源を⽰す優れたマーカーであり,その⻑期連続観測は⼤気汚染対策の効果検証や経済不況の影響評価などに利⽤されている。
また,⼈間活動との関連から,⾃動⾞や産業活動などから排出される⼈為的なNO2の濃度はしばしば週内で特徴的な変動を⽰す。このように週末と平⽇の濃度差をもたらす効果はウィークエンド効果と呼ばれる。多くの世界の都市では,⼈為的な窒素酸化物排出量の減少のため,NO2のウィークエンド効果が近年⼩さくなっていることが報告されている。このような⻑期的なトレンドの中,新型コロナウイルスが発⽣した。
研究ではコロナに影響を受けた都市について,Googleモビリティ(公共の駅で乗り換えた⼈数)データを,新型コロナウイルス発⽣前と⽐較した。その結果,ロックダウンに伴ってモビリティが⼤幅に減少した。
他⽅,⽇本ではロックダウンという⽅法は採られなかったため,モビリティの変化は他国と⽐較して⼩さく緩やかだったが,⽇本でも感染が拡⼤するとモビリティは低下したままとなった。その中,⽇本は週末のモビリティが平⽇よりも10%程度減少していた。ほとんどの国では週末のモビリティは平⽇とほぼ同じであり,これは特異な傾向だという。
研究グループは,地上や衛星などから得られた⽇本の⾸都圏の⼤気データを統合して解析し,⼆酸化窒素(NO2),ブラックカーボンなどの光吸収性エアロゾル,ホルムアルデヒド(HCHO)の⼤気中濃度のウィークエンド効果が例年に⽐べて顕著に増⼤していたことを明らかにした。
これは他国とは異なり,⽇本の⼈流が週末に特に減少したことと相関していた。このことから,新型コロナウイルス感染拡⼤を抑えるための⾃主的な⾏動制限の結果,⼤気微量成分の濃度に⽇本特有の変化が⽣じたものと考えられるという。
引き続きリモートセンシングによる観測とデータ解析を継続して,⼈間の健康や地球環境に及ぼす⼈間活動の影響を評価し,より効果的な環境対策への貢献を⽬指すとしている。