北海道大学と凸版印刷は,アルツハイマー病の発症リスク評価における血液バイオマーカーとなるアミロイドβが結合したエクソソームを1個単位で識別・検出する技術の開発に成功した(ニュースリリース)。
アルツハイマー病の治療法や予防法において,脳内でのアミロイドßの蓄積状態を計測するための検出技術開発も行なわれている。アミロイドßの蓄積はアルツハイマー病発症の20年以上前の認知機能が正常に近い状態下で始まるため,発症前の早期治療や予防を行なうためにアミロイドß蓄積状態を評価する技術が重要となる。
現在,このアミロイドß蓄積を検出する手法としては既に脳髄液検査やPET(陽電子放出断層撮影)イメージング検査が実用化されている。しかし脳髄液検査は人体への負担が大きく,高額な設備や試薬が必要で検査を受けられる病院が限られているため,簡便に何度でも検査できるようなアミロイドß蓄積の検出技術の開発が期待されている。
このような課題に対研究グループは,これまで培ってきた脳内特定物質のエクソソームに関する知見と,一分子ごとに分配・検出する高感度蛍光検出技術を用いて,アミロイドßが結合したエクソソームを高感度検出する技術「immuno-digital invasive cleavage assay(以下 idICA)法」の開発に成功した。
この技術は,検出チップ上に集積した100万個のマイクロメートルサイズの微小なウェルに標的となる分子や粒子を確率的に1個ずつ閉じ込めて,分子や粒子から発する信号の有り「1」,無し「0」で標的をデジタル検出・定量する高感度バイオセンシング技術。
信号検出には凸版印刷の独自技術「Digital ICA」を採用し,アルツハイマー病モデルマウスの少量の血液(100μℓ程度)を用いてアミロイドß結合エクソソームが定量的に検出可能となった。
この技術を使ってアルツハイマー病モデルマウスの血液中のアミロイドß結合エクソソームを経時的に計測したところ,加齢で脳内のアミロイドß蓄積が進むに従って,その量が増加することを発見した。
これまでの研究から,アミロイドß結合エクソソームは,アルツハイマー病の初期病理であるアミロイドß蓄積に関与すると考えられている。研究グループは,血液バイオマーカーとしてこの特定のエクソソームを検出することで,発症前や初期アルツハイマー病を簡便な方法で迅速に診断することができるとしている。
※検出に必要な血液量の単位を修正しました。