京大ら,フォトニック結晶レーザーで自遊空間通信

京都大学とKDDI総合研究所は,フォトニック結晶レーザーを用いた高出力自由空間光通信の実証に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

⼀般に,光をより遠くに送るためには⾼いパワーの光を発射する必要があるが,⾼いパワーを有する光を発射するためには,ファイバーアンプ等,⼤型の装置を⽤いて光を増幅することが必要となる。また,⾼いパワーに加えて,ビームの拡がり⾓を⼩さくすることも重要となる。

このようなファイバーアンプ等を経て出射された通常のレーザー光は,⼩さな⾯積の領域から発射されるが,発光領域の⼤きさとビームの拡がり⾓には反⽐例の関係があるため,そのまま空間伝搬させるとビームが極めて⼤きく(>10°)拡がっていく。

このビーム拡がりを抑えるためには,複雑な光学系が必要となるが,このような外部光学系も装置を複雑にし,その結果装置の⼤型化を招く。そこで研究グループは,⾼いパワーで狭い拡がり⾓をもち,レンズフリーで活⽤可能なフォトニック結晶レーザーに着⽬し,⾃由空間光通信への利⽤に向けた研究開発を進めてきた。

その結果,研究グループはフォトニック結晶レーザーを⽤いた⾃由空間光通信の実証に成功した。これまでフォトニック結晶レーザーを⽤いたレーザー加⼯や光の測距(LiDAR)は実証されてきたが,通信での実証は世界で初めてとなる。

今回⽤いたフォトニック結晶レーザーは,単⼀の半導体素⼦でありながら極めて⾼い出⼒光(≥W)を出⼒することが出来るため,従来のファイバーアンプなどの⼤型装置を⽤いる必要がない。

さらに通常の半導体レーザーと⽐較して,極めて⼤きな領域で単⼀モードで発光するため,ビームの拡がり⾓が 0.1°程度以下と極めて⼩さくなり,外部レンズ系を⽤いることなく,そのまま空間に発射することが出来る。これら2つの特徴によって,送信機構成を⼤幅に簡素化することができる。

実験では64QAM変調された,864MHzの帯域を有するOFDM光信号を,1W級の光パワーでフォトニック結晶レーザーから発射し,1.1mの空間伝送に成功した。この結果は,フォトニック結晶レーザーを⽤いた5Gb/s相当の⾃由空間光通信の実現の可能性を⽰すもの。

研究グループは,より⾼出⼒で⾼速な⾃由空間光通信を実現し,Beyond 5G/6G 時代における宇宙空間での通信を⽀える光伝送技術の研究開発を推進するとしている。

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