日本電信電話(NTT)は,世界最大容量1波長あたり1.2Tb/sの光伝送を実現するデジタルコヒーレント信号処理回路および光デバイスを開発した(ニュースリリース)。
情報通信トラヒックが増大する中,同社は既設の光伝送システム容量を経済的かつ大幅に拡張できる世界最高水準の光伝送技術および光デバイス技術の開発を進めてきた。
今回開発した技術は,光の偏波,振幅,位相をすべてデジタルデータとして取り込み,高度な信号処理によって光ファイバ伝送路や光電子デバイス中で発生する信号歪みを補償するデジタルコヒーレント光伝送システムに適用されるもの。世界最高水準のデジタルコヒーレント信号処理回路と,世界最大級の光-電気応答帯域を実現する140ギガボー超級の光デバイスで構成される。
理論限界に迫る伝送性能を有する最先端の符号化変調技術と,低消費電力に大容量データのビット誤りを訂正できる前方誤り訂正技術を組み合わせることで,光デバイスが有する高速・広帯域性能の潜在力を最大限に引き出すフレキシブル符号化変調を実現した。
さらに,光ファイバ伝送の信号歪みを低消費電力に補正するアルゴリズムや最先端CMOSプロセスを活用することで,世界最大容量の1波長あたり1.2Tb/sのデジタル信号処理を実現した。
独自構造を採用した世界最高速級の光素子および高速信号を低損失に伝える新パッケージを適用することで超高速の光変調を実現。これらの技術を偏波多重64QAMに適用した符号化変調光信号により,1波長あたり1.2Tb/sを実現した。
これにより,現在広く普及している商用光伝送システム(1波長あたり100Gb/s)の12倍となる1波長あたり1.2Tb/sに伝送速度を高速化できる。1波長あたりの伝送容量を拡大させることで,ビット当たりの消費電力も既存光送受信器と比較して,1/10以下に削減が可能になるという。
これまで達成されている最大の1波長あたりの容量は国内外含めて800Gb/sだったが,この成果により1.5倍の増大を実現した。1波長あたりの容量を増大させる方法として,多値レベルのより高い変調方式を利用する方法があるが,伝送距離が制限されてしまう。
この技術により,これまで100ギガボーであった変調速度を140ギガボーまで高速化することで,多値レベルを抑えた変調方式が利用可能となり,伝送による波形歪みや光増幅雑音に対して高い耐力を実現できるため,800Gb/s信号の伝送距離をこれまでの2倍以上に拡大できるとしている。