富士キメラ総研は,レベル3車両が普及段階に入りつつあり,レベル4/5車両の一部実用化が進んでいる自動運転車の世界市場について調査し,その結果を「2022 自動運転・AI カー市場の将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,自動車事故の減少を目指した安全装備の拡充や搭載が進められており,2022年の自動運転レベル2以上の車両の市場は拡大するとみらている。
レベル3では本田技研工業が「LEGEND」を2021年にリース限定での市販を始め,以降そのほかでもレベル3の車両の発売がみられる。レベル3の自動運転システムは,高価なセンシングデバイスを多く採用しているため,高級車から搭載が進み,大衆車には2025年以降になるとみる。
また,レベル3以上は,運転主体が部分的に自動運転システムになるため,法規制や事故時の責任問題などクリアすべき課題があり,これらの課題がクリアとなってくる2030年以降,普及段階に入ると予想している。
レベル4はロボタクシーや無人バスといった商用車で先行しており,2022年は米国と中国でそれらの車両によるサービスが堅調に増加しているという。レベル4の乗用車発売を計画する中国メーカーも出てきているが,本格的な市場拡大は2030年以降になると予想する。
レベル5の実現には,車両側の技術向上だけでなく,インフラの整備や自動運転に対する社会的な受容性の向上など,さまざまな要素が関わってくるため,市場の形成には時間を要するとみている。
自動運転レベル3以上車両のエリア別市場(生産台数ベース)は,2022年は中国と米国でレベル4のロボタクシーや無人バスといった商用車が先行しており,市場をけん引しているという。2025年頃にドメインコントローラーやビークルコンピューターに搭載されるビークルOSの完成を目指している自動車メーカーが多数あることから,2030年以降に本格的な市場拡大を予想する。
LiDARはレベル2+以上の自動運転システムに採用され,高度な位置測定,対向車や歩行者などの識別,白線検知などの周辺情報検知を行なう。2021年から中国各省でLiDARを採用した自動運転システムを搭載するロボタクシーによるサービスが始まっており,新興EVメーカーもLiDARを搭載した車両を発売するなど,2022年には市場は中国を中心に129億円を見込む。
レベル3では,自動運転システム主体の制御を実現するためにLiDARとダイナミックマップを組み合わせて搭載する必要があり,特にレベル4/5では,自動運転システムを2重,3重にして,一つの系統に不具合があっても最低限の安全性が保てるようにすることが必須であることから,市場は大幅に拡大すると予想する。
DMS(Driver Monitoring System)は,車内カメラを用いてドライバーやその他乗員の状態を検知するシステムを対象とし,近赤外線カメラとDMS ECUで構成されている。自動運転のレベルごとに担う役割が異なる。レベル2では部分自動運転中にドライバーがDDT(Dynamic Driving Task)を担っていることを担保するために利用される。レベル3では,自動運転中に運転をドライバーに切り替える必要が発生した場合に,ドライバーが運転可能な状態か判断するために使用される。
欧州では2024年にDMSの搭載が義務化されるほか,北米でも2026年までに搭載が推奨されることから,市場は拡大するとみている。一方で,2026年頃からDMS ECUがADASや自動運転系ドメインコントローラーやビークルコンピューターに統合が進み,市場の伸びは緩やかになると予想している。